★×忍足侑士B★

□底
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好きとか嫌いとか。
そんなのじゃ、なかったと思う。

□■底□■

今日も跡部は忍足を抱く。
抱くというのは、適切ではないかもしれない。
そんな生優しい関係ではないのだから。
裸に剥いた忍足をベッドに押し倒し、乱暴に犯している。
愛撫なんて優しい行為はほとんどない。
ただ、自身を捩込むことが出来る程度に濡らして解して、突っ込んで揺さ振るだけ。
当然、濡らすのはローションだ。
場合によっては忍足が自ら解して見せることもある。
今日は機嫌が良かったからか、跡部が適当に解したのだが。

「ぅあ、あっ、ひぃ…ッ!」

跡部が動く度に、忍足の口から引き攣った声が漏れる。
いつもの低い声とは似ても似つかない、甲高く甘い声。
こんな声を聞くことが出来るのは自分だけだと思うと、跡部は余計に興奮してしまう。

「あ、ぁあっ!跡部…っ…!」

忍足の媚びるような甘い声が耳につく。
興奮を煽られるはずの声に、どこか耳障りな響きが入っているような気すらする。

「はぁっ、ぁ…跡部っ、…ン、っ…好き、ぃ…っ!」

好き。
忍足はこの行為の時必ずこの言葉を言う。
しかし跡部はそれに応えない。
理由は簡単だ。
跡部は忍足のことが好きではないからだ。
ただの性欲処理。
ただのセフレ。
それだけの関係だ。
それなのに偽りの愛の言葉を囁くなんて、無意味なことだ。
跡部はそう考えていた。
今日も、跡部は一度も愛を囁くことなく行為を終える。
気を失った忍足にも、何の愛着も感じない。
跡部は忍足に背を向けて眠りに就いた。

***

翌日。
目が覚めた時には忍足はいなかった。
乱雑に脱がせた服も、持ってきていた鞄もなくなっていたため、跡部が起きる前に帰ったのだろう。
いつもこうだ。
甘い愛の言葉も交わすこともなく、黙って別れる。
身体だけの関係にはこれで十分だ。

「…ん?」

ふと床を見てみると、跡部が脱ぎ散らかした服はきちんと畳んで置かれていた。

「…?なんだ?」

更に、その上には小さなメモも置かれている。
それには、『先に帰る』とだけ書かれていた。
確かに忍足の筆跡だが、いつもとは少し違う、ほんの僅かにだが震えているようでもあった。
だが、それが何を意味するのかは跡部には判らない。
跡部はそのメモを握り潰すと、無造作にごみ箱に放り込んだ。

***
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