★×忍足侑士B★
□ダイブ
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青い空。
白い雲。
ある夏の1日。
□■ダイブ□■
「…久し振りに来い言うから来てみたら…何なん?これ」
「何って、見たら判るやろ?」
「夏といえば海水浴に決まってるやん」
夏の休暇を利用して、忍足は大阪に遊びに来ていた。
部活で忙しく、大阪まで来る余裕はあまりなかったが、謙也が熱心に誘うのに負けたのである。
宿はもちろん謙也の家、従兄弟同士で仲も良く、忍足も気兼ねなく過ごすことが出来る。
そうして大阪に来て2日目、忍足は海に連れて来られていた。
「いや、まあ言いたいことは判らんでもないけど…普通海っちゅーたら女の子と来るとか…あるやろ?」
謙也が連れてきたのは白石を始めとするあの部活のメンバー。
そのメンバーが嫌というわけではないが、忍足にとっては少し華が足りないように感じられた。
「ええやん、たまにはこうやって男同士の友情深めるのも悪くないやろ?」
「そんなん気にしとるより遊んだ方がええで?」
実際、海に着くなり、遠山はさっさと海に飛び込み、石田はそれを追い、一氏と小春は揃っていなくなり、財前もいつの間にかいなくなっていた。
「ほら、ええから行くで。ちゃんとこれも用意しといたからな!」
「……」
謙也が満面の笑みで差し出してきたのは、大きなワニ型のフロート。
幼い頃、一緒に海で遊んだ時にも使ったものだ。
当時忍足はこれが好きで、海にいる間ずっと離さなかった。
「侑士、これ好きやったやろ?」
「いつの話やねん。…まあ、好きやったけど」
「ほな、行くで。ゆっくりしとったら日が暮れてまうしな」
謙也と白石に腕を引かれ、忍足はやや強引に海へと引き込まれていった。
***
「なあ、こんなとこ入っても大丈夫なん?」
「大丈夫やって」
「ほら、足元見とかんと危ないで?」
暫く泳いだり浮かんだりして遊んだ後、忍足は謙也達に連れられてビーチの外れにある洞窟に来ていた。
ビーチから少し離れているせいもあってか、他に人はいない。
外では眩しいくらいに照り付ける太陽も、ここには直接届かず、少し薄暗かった。
「別に…海来たんやから海に居ったらええやん」
「たまにはこういうとこもええやんか」
「せや。ここも泳げんわけやなさそうやし」
実際、洞窟の中にも海の水が入ってきていて、まるで水路のようになっていた。
しかし、泳ぐには少し深さが足りないようでもある。
なのに、謙也は律義にここにもフロートを持参している。
「はぁ…まあ、ええか」
3人揃って少しずつ奥へと進んでいくと、段々と太陽の光も届かなくなって暗くなっていく。
足元は岩場で、履物はサンダル。
かなり気を付けていなければ転んで怪我をしてしまいそうなほどだ。
「なあ、これ…どこまで行くん?」
「もうちょいやって」
「なんや、怖いんか?」
どんどん暗く狭くなっていく洞窟に、全く不安がないわけではなかった。
だが、怖いと言われるとムキになってしまうもので、結局忍足は大人しくその後をついていった。
「へぇ…最後はこんなに広いんか」
「ちょっと暗いけどええ感じやろ?」
行き止まりになったところで、改めて周りを見回すと、暗いことを除けば広く綺麗でとてもいい場所のようであった。
「ほら、ここの水冷たくて気持ちええで?」
「ちょっ…!」
謙也に手を引かれ洞窟内の水が溜まったところに入ってみると、確かに水がひんやりと冷たい。
外と違って太陽に当たっていないため、水が温められることなく冷たいままのようだ。
「こんなとこあるんやなぁ。知らんかったわ」
「まあ俺らも最近知ったんやけどな」
「人も居らんし、穴場やろ?」
白石もそこに入ってきて、ワニのフロートも近くに浮かんでいる。
柔らかいそれをぎゅっと抱き締めながら浮かんでいるのがとても気持ちいい。
あまり波が寄せてきておらず、穏やかに漂っていられる。
「なあ侑士」
「なん…っ!」
そうしてのんびりしていたところで、突然謙也に口付けられる。
驚きのあまり、フロートから落ちそうになってしまうが、白石が素早く後ろから抱き締めて支えてくれる。
「ん…ぅっ…!」
「なあ、なんでここに連れて来たか判るか?」
「ここな、ホンマはここまで来たらあかんのやって」
唇が離れたかと思うと、二人の欲情した顔がはっきりと見える。
忍足はそこで初めて、この二人の意図に気付いたのだった。
***
「はぁっ…ぁ、ああっ…」
忍足はすっかり水着を脱がされ、何も身に纏わぬ状況でフロートにしがみついていた。
水の中で自身を扱かれ、自身はどんどん硬度を増していった。