★×忍足侑士B★

□底
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「なあ、忍足。お前、なんでいつも余計なことしてくんだ?」

「え?」

次に忍足が家に来た時、跡部は何気なく問い掛けた。
忍足はいつも、服を畳んでおいたり、跡部がシャワーを浴びているうちにシーツを掛け替えておいたり、部屋を片付けておいたりする。
跡部が強要したわけでもなく、自発的にだ。

「別に…ええやん。散らかっとんの好きやないし」

忍足は笑ってはぐらかすが、それだけが理由ではないことくらい、跡部にはすぐに判った。
ごまかしたり嘘を吐いたりする時、忍足は絶対に相手の目を見ない。

「…まあ、いいけどな」

しかし、それを無理に聞こうとすると、忍足の態度は頑なになってしまう。
それも判っているから、跡部はそれ以上何も言おうとはせず、さっさと忍足を押し倒した。
どうせ身体だけの関係だ。
余計なことを詮索する義理はない。

「…っ、あ…跡部…っ!」

忍足のことなんか、別に好きではない。
それなのに、忍足が名前を呼ぶ度、何か心に引っ掛かるものがある。
このもやもやしたものは、一体何なのか。
跡部はそれに気付けないでいた。
あるいは、気付かないようにしていたのかもしれない。

「は、っぁ…あぁっ!す、き…跡部っ…」

また今日も忍足は愛を囁く。
繰り返し、何度も。
それが煩わしいようであり、望ましいようでもある。
この感覚が、何を表しているのか、跡部には判らない。

***

「はぁっ…は…」

荒い呼吸を繰り返す忍足を見下ろして、跡部は小さく溜息を吐いた。
抱いてすっきりしたはずが、苛立ちが募るばかりだ。
こんな感情、跡部は知らない。

「…帰れよ」

「…へ…?」

「もういいだろ?ヤるだけヤったんだから」

跡部は苛立ちを隠しもせずそう告げると、脱がせていた服を投げ付けた。
突然のことに混乱する忍足に無理矢理それを着せ、引きずるようにして家を追い出した。

「じゃあな」

「えっ…」

混乱する忍足を無視して、跡部はドアを閉めた。
こんなことをするのは初めてだ。
跡部は自分で自分が判らなくなってそのままずるずるとしゃがみ込む。
暫く考えてから、覗き穴から見てみると、忍足はもういなかった。
それが判った途端、胸が締め付けられるように痛む。

「…っなんなんだよ…!」

その気持ちが意味するものを、跡部は知らない。
それが、忍足から繰り返し囁かれたものだということに、跡部は気付かないままだった。

□■END□■
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