★×向日岳人A★

□君との関係
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それなのに岳人は勝手に嫉妬して、勝手に怒って、勝手に飛び出してきてしまった。

「怒ってんのかな…」

先ほどきたメールにも返信出来ない。
今帰ったら、また同じことを繰り返してしまいそうで怖かった。
恋人としての余裕さえあれば、こんなことにはならなかったはずなのに。
岳人は少し休もうと目を閉じた。

***

結局、岳人が跡部に会いに行く決心をしたのは翌日になってからだった。
電話もメールも出来ないまま、震える手でインターホンを押すと、すぐに跡部が出てきた。

「岳人?」

「あ…昨日は…ごめん」

驚いた様子の跡部に、岳人は慌てて頭を下げて謝った。
昨日はいきなり出ていってしまって迷惑を掛けてしまったということを、謝らないわけにはいかなかった。

「気にすんな。…上がれよ」

跡部に促されて家に上がる。
またソファに隣同士腰掛けると、跡部が岳人の左手をぎゅっと握った。

「跡部?」

「悪かった。…昨日は、無神経なこと言ったな」

跡部も、昨日岳人が出ていった後少し反省したらしい。
向こうの思い出とはいえ、何も考えず他の人のことを目の前で褒めたり楽しそうに話したりしてしまうのは、恋人としてするべきではなかった。

「あ…俺の方が、そんな…」

「いいから。…ごめんな」

跡部にぎゅっと抱き締められ、岳人は何も言えなくなってしまう。
服越しに伝わってくる跡部の体温がとても心地よい。

「…愛してる」

跡部の声は、少し震えているようにも聞こえた。
岳人はそっと、自分から跡部の背中に手を回した。
密着度が高くなり、よりはっきりと温もりが伝わってくる。

「跡部…」

「好きだ…」

抱き締める腕に力が入る。
苦しさよりも嬉しさの方が勝る。
そして、本当に愛しているのだと思い知らされる。

「俺も…跡部が好き…」

岳人の方からも気持ちを伝えると、跡部がとても嬉しそうに笑った。
その笑顔はとても綺麗だった。

「絶対離さない」

身体が離れたかと思うと、跡部は岳人の顎に手を添え、そのまま唇を重ねた。
触れるだけのものが、妙に長く感じた。

「愛してる」

二人は間違いなく恋人なのだと繰り返される囁きは、二人だけの空間に静かに響いた。

□■END□■
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