拭ってくれる優しい手





「伊達、想いというものは劣化するものなのか?」
「I don't know、どうだろうなァ」
「…‥そうか」



くるくると湿布の上に包帯を巻き付けてやる。
あれから元就サンは、核心は相変わらず隠したままだが、暴力を受けたら話してくれるようになり、手当てはさせてくれるようになった。
前に比べたら大分進歩したもんだ。
保健室もすっかりたまり場になった、明智さえ手なずければいい隠れ家だ。



「私のお昼寝タイムをあまり邪魔しないで下さいね二人ともー」
「shut up!テメェは仕事しろ、」
「いいえ、ここでは私がルールで、私が法律です」
「貴様は本に阿呆だな、明智」
「はぅ、毛利まで酷いです、これも伊達なんかとつるんでるせいですね」
「何でそうなるんだよ」



もう一つ、変わったことがある。
元就サンが笑うようになった。
前のような諦めを含んだ笑みではなく、素直に感情を表すような、そんな。
傍から見たら何の変わりもないぐらいの変化だが。
(けれど大きな変化に違いない)



「元就サン、さっきのquestionだけど」
「うむ、」
「元就サンが望むなら、俺は変わらないでいる自信はある」
「…、そうか、」



巻き終えた包帯を眺めながら、小さく呟くその先はきっと、元就サンが想っている人なんだろう。
(暴力を受けても、やはり好きなんだろう)
(I'm not rewarded.)
俺だったら、大事にして甘やかして、何でも二人で共有するのに。
今、彼を縛り付けている奴は、不安なんだろう。
だからといって、馬鹿なことをしていると思う。



このぬるい温度の中にいて
いつか元就サンがそいつに愛想を尽かして別れるまで
(事次第ではそれまで気長に待てるとも思えないが、)
be aware of me.
俺はいつまでも彼に手を差し延べる、深い海に引きずり込まれないように。




⇒to be continue




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