お題
□5.キス
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愛
そんな言葉は俺たちには無縁の言葉。
愛してる
そんな囁きは俺を繋ぎ止めて置くだけの術。
キス
仁王と初めて出会ったのは1年の時。
テニス部を見学に行った時、偶然出会った。
綺麗な銀色の髪の毛。整った顔立ち。そして何よりも、俺が持っていない物をたくさん持っていそうな・・そんな印象を受けた。
仁王と親しくなったのが2年の時。
お互いレギュラーに選ばれて、接点も増えるようになった。
少しずつ少しずつ惹かれて行くのが解った。
仁王の事好きって気づいたのが3年になった今年。
今思えば1年の頃からずっと好きだったんだろう・・。
そして仁王と体の関係を持つようになったのが1ヶ月前。
誘ってきたのは仁王の方。承知したのは俺。
理由なんてそんな大層なものは無い。
ただ・・少しでも長く仁王の傍に居たくて。
俺たちの関係に“愛”なんて存在しない。
仁王にとって、俺はただの都合の良い性欲処理の道具に過ぎないのだろう。
でも、少しだけ愛の存在を信じるときがある。
お前のキスは優しすぎるから・・・。
お前のキスは、暖かくて優しくて・・
本当は愛されてるんじゃないかって錯覚を起こす。
仁王は詐欺師だから、俺を騙しているだけなのかもしれない。
それでも、キスの優しさに触れた時の幸せは消えない。
そうやってどんどんお前に溺れていく・・・。
それでも良い。お前に溺れて沈んでも、自業自得。
騙される事にはもう慣れた。
今思えば、お前と出会った3年前からずっと騙され続けているんだから・・。
今日もまた、偽りの愛で俺を包んで
唇に優しいキスをして・・・。