お題

□8.勝負
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「ハルー!!今日、幸村のお見舞い行こうぜぃ!!」

そう言って、嬉しそうに近づいて来る赤い髪。


愛しい愛しい俺のコイビト。


「良かよ。久しぶりに部長さんの顔でも拝ませてもらおうかのぉ。」



今日俺は、ブン太と一緒に、幸村に会いに行く。

今まで何度か1人で病室の前まで足を運んでいた。


でも俺は、1度もドアを開けることが出来なかった。



怖い??




そうかもしれない。




怖い??




あの日の笑顔と言葉が頭から離れない。






勝負









王者立海大付属中テニス部。

俺が言うのもなんだが、部員は一癖も二癖もある奴らばかり。


そんな部員を1つに纏めていたのが部長である幸村だった。

幸村は俺達にとって掛け替えのない存在だった。







そんな幸村が突然倒れた。




本当に急な事で、俺も真田も柳でさえも、状況を把握する事が出来なかった。







幸村が倒れた時、一番取り乱したのはブン太だった。



幸村には手術が必要だと告げられた時、一番絶望的な顔をしたのもブン太だった。







その話を聞いたとき、アイツは笑った。ゆっくりと幸せそうに…。



そして、静かにこう言った。



「病気になって良かった…。」と。





俺は、その笑顔に始めて恐怖を覚えた。





優しく笑っているハズなのに…

背筋が寒くなるような、そんな笑顔。





俺は、その顔を見たとき、気付いてしまった…。




幸村は、ブン太を愛している。


俺とブン太の関係を知りながら…それでも心から愛してる。



その日から、幸村のあの笑顔は、俺の頭から離れる事は無かった。
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