封神

□太乙+ナタク
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仙界大戦が終わりを告げてから幾年も経ったある日のこと。


この日は雲一つない青空だったため、神界から人間界がはっきりと見えていた。



人間でもあり宝貝でもある宝貝人間ナタクはこの青空を見下ろしていた。


いつの間にか太乙が近付いていたことにも気付かずに。



「ナタク、どうしたの?」



反射的にナタクは振り向いた。だが、太乙の姿を見ると再び視線を人間界に戻す。



「そこからじゃあ、君の母上は見えないだろう?」



肯定なのか否定なのか、ナタクは黙ったまま人間界を見つめている。

太乙はナタクに近付こうとして…足を止めた。



「オレは…天国に行けるのか?」


「え?」



聞き逃してしまいそうな小さな呟き。独り言かもしれないが、太乙は聞き返していた。


どっちにしても、この子がそんなこと言うなんて何かあったのだろう。



「母上が言っていた。人は死ぬと天国に行くんだと」


「ああ、そう言われてるみたいだね」


「オレも行けるのか?」


「………どうしてだい?」


「オレは戦うために作られた。だが、戦わなくなったら生きていないことになる」


「……そんなことないよ」


「?」



ポツリとした呟きに、ナタクは視線を太乙に向けた。


太乙はややうつ向いていたが、顔を上げ力強く言った。



「生きていないなんてことはない。戦うから“君”なんじゃないよ。君は君だからね。私は君を戦わせるためだけに作ったわけじゃない」



太乙はナタクに背を向ける。



「…でも……君は天国に行けるよ。…絶対に」



呟くように、噛み締めるように言うと、そのまま歩き出した。


ナタクは太乙の背を見つめていたが、ちらりと人間界を見ると、太乙を追って歩き出した。

心に染み入る青空を背負って……




―分かっているのかな?『死んだら天国に行く』と言う言葉はこの世に残された人のための言葉だと…。失った魂は天国に行ったのだと思うことで悲しみを和らげることができるから。


生涯に幕を閉じた人と、それを見届けた人では、どちらがより深い悲しみに包まれるのだろうか…?―





fin
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