文心[版権]
□攻殻機動隊 アナザーストーリー
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それぞれが得てきた情報を、9課に戻って検証することになった。
調査に向かわなかった残りの隊員たちも検証に参加し、トグサが調査書を読み上げるのを聞いている。
「感染したと思われる患者の証言から、みな医師から病状などの告知を受けてから“死”について検索したとの共通点が上げられています」
トグサの言葉を受けて、イシカワが検索結果を表示させていく。 ネット上のさまざまな検索サイトが羅列され、その中のひとつに画面をフォーカスする。
「“死”についての検索項目に、第7レベルまで達すると発症するウイルスが仕込まれていることが分かったぞ」
それは、草薙が思っていたよりも深刻な事態であることを示していた。
「そこにアクセスして感染したってわけね」
「ああ、そう考えられるな」
どうする、というようにイシカワが視線を投げかける。
「“エルドラード”……地図上から消された黄金郷の名前だわ」
「なんだってそんな名前をつけたんだろうな?」
確かに、消されたものに対してあまりいい印象は受けないゆえに疑問に思うのも無理はない。
まして、救いを求める場所として、敢えてその名を付ける意図が分からなかった。
その疑問に答えられる者はいなかったが、代わりにトグサが口を開いた。
「その“エルドラード”に行くことを教唆しているのが、カネダっていうヤツらしいんですよ」
「“カネダ”って誰なんだ? 新手の新興宗教家か?」
先ほどまで傍観を決め込んでいたバトーが興味を示す。草薙自身も初めて聞く言葉だった。
「今のところ、そういうものが絡んでいるかどうかは分かりませんが……」
そう前置きをして、トグサは調査書に目を落とす。
「その“カネダ”は患者たちに“エルドラード”に行けば助かると言っていたらしいんです」
「“エルドラード”ねぇ……そりゃ天国とか極楽浄土みたいなのと同じか?」
「まあ、それに近いものであることは確かね」
「そこへ行けば本当に助かるってのかよ?」
信じられないと言うように、バトーは鼻を鳴らした。