夢拾参夜
□第壱夜
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こんな夢を見た。
ぼくは、とある屋敷を訪ねなければならなかった。自宅からバスと電車を乗り継ぎ、田園風景の広がる田舎に辿り着く。まるで、昭和初期の映画に使われるような駅だった。勿論、一日数える程しか本数も出ていない。とにかく駅員に切符を手渡し、畑に挟まれた道に沿って歩いていく。人は全くいなかった。家はちらほらとあるのにも関わらず、子供さえ歩いていない。
しかし、黙々と歩いていくとその屋敷はすぐに解った。一軒だけ家ではなく、確かに屋敷だったのだ。
「遅かったね、ずっと待っていたのに」
ぼくは愕然とした。世の中には、「自分と同じ顔の人間が三人はいる」と聞いたことはあったが、実際体験するのは初めてだった。あまりにも似過ぎている。彼は、縁側で素足を伸ばしていた。時折、涼しげな風鈴の音が耳に入る。
――チリン。
呆然としていると、彼はぼくの方に裸足のまま走り寄ってきた。それはもう、満面の笑みで。
「遠かっただろう、疲れてないかい?」
「大丈夫、それより君は……」
誰なんだい、と訊こうとした瞬間だった。