夢拾参夜

□第参夜
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 こんな夢を見た。

 暑い、真夏日だった。実際、真夏だが。辺りには人が幾らか見える。ぼくと違い、皆スーツで平然と歩いていた。ぼくは何もしていないのに、体中から汗が噴き出している。髪も、服も汗でべったりと張り付いていた。コンクリート・ストリートはぼくの汗を受け、幾つか染みを作る。だが、すぐ蒸発して元の色に戻ってしまった。
「……暑い」

 太陽が近くにある錯覚さえする。
街で一番高いビルの屋上で、ぼくは両手で銃を構えた。太陽に近付いた分だけ、また暑い。ぼくをギラギラと照らし続けるとは、いい度胸だ。そして、歯を喰い縛って無言で撃つ。

――ドンッ!

 外した。桁外れの方向に飛んでいくが、気にしない。
「夏は嫌いだ」
再び、狙いを定めた。段々と、銃も熱を持ち始める。じりじりと目の中まで焼けそうだ。はぁ、と溜めた息を吐く。通常の息よりも、ずっと熱い。撃った振動で、手も痺れる。しかし、何より撃つ音が耳についた。苛々する、何もかも壊したい衝動。
「何度言わせたら気が済む?」
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