夢拾参夜

□第肆話
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 こんな夢を見た。

 目の前の両親の顔は、苦しみに歪んでいた。
「どうして……、どうして……、こんな事を……するの……?」
父親は既に、事切れていた。母親は腹部を押さえて、悲しそうにぼくを見ていた。血塗れのキッチンに、加害者のぼくと死に掛けの母親と死んだ父親と。二人と一体。

――さようなら。

 ぼくは、母親に止めを刺した。抵抗しない母親を屠るのは、赤子の手を捻るより簡単だった。

――ダンッ!

 頚動脈に、上手く刺せた。刺した、というより切り落とした。手には、ギトギトの包丁が光っている。とても、とてもいい気分だった。妙な興奮さえ感じている。ゴロ、とぼくの足元に首が転がった。ガラス戸には、ぼくの顔が映った。紅く染まったブレザーは、ワイシャツにも染みているようだ。ぼくは皮膚が破れそうに成る程、手を洗った。目の前にある鏡を見ると、顔にも血が飛び散っていた。
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