夢拾参夜

□第漆夜
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 こんな夢を見た。

 ぼくは、とある骨董品店にいた。
「いらっしゃい」
別に、来るつもりは無かった。
「なかなか、良い物が入っているよ」
にや、と老人は笑った。男か女かさえ解らない風貌は、奇妙な雰囲気を醸し出している。
「あんたが、うーんと欲しがっていた物さ」
「ぼくは、何も欲しいと言ってないのですが」
老人は、店の奥へと進んでいく。ぼくは、慌ててそれを追いかけた。薄気味悪い物が、所狭しと並んでいる。眼球の薬品漬け、鼠の干乾びた物、腐りかけの蛇。挙句の果てには、死んでいるのか生きているのかさえも解らないような人間までも転がしてある。
「あんた、魚が欲しいって言ってたろう?」

 目の前には、大きな水槽があった。淡水魚にも見えるし、海水魚にも見える不思議な魚。
「これは」
何ですか、と訊く前に言われた。
「世にも珍しい、溺れる魚だよ」
「は?」
老人は、不快に感じる程けたたましく笑った。
「魚といえば、泳ぐものですよね?」
「いっひっひ……、ならば見て御覧」
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