夢拾参夜

□第拾夜
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 こんな夢を見た。

 ぼくはずっと、眠れない日々が続いていた。要は、不眠症の軽いものだが。友人には睡眠薬を勧められたが、ぼくは薬に頼るのがどうしても嫌だった。眠気も増せば、自然と眠ることも出来るだろう。そう思い続け、今日で十日目。布団には入るが、一睡も出来ない。最近、少しノイローゼ気味だ。それもその筈、一昨日辺りから幻覚の様な物を見るようになったからだ。独り喚き、おかげでアパートの隣人には変人扱いだ。ぼくだって、意味も解らず喚くのではない。理由はある。

 一昨日は、蛞蝓がぼくの体中を這い回るのだ。何匹か、ぼくの口の中に入った。蛞蝓を食べると声が良くなるとか何とか言うが、ぼくは見るのも嫌だ。ぼくは、自分の頭がおかしくなる程に叫んだ。
「止めろ……、止めろおおおぉぉおおおおおおぉぉぉおおおおお!」

 気分が悪くなり、食べ物を全て戻す。冬にも係わらず、頭から冷水を浴びた。コンビニでは一キロの塩を買い、頭から被った。考えてもみて欲しい、軟体動物が自分の体を這う様子を。勿論、一匹や二匹などではない。
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