夢拾参夜

□第拾弐夜
1ページ/3ページ



 こんな夢を見た。

 ぼくは、神社の境内にいた。赤茶けた鳥居、古ぼけた建物、泥の付いた石畳。どこを見ても、何を見ても全てが古めかしい。ぼくは、毎日の日課でもある願掛けに来ていた。
「……かーごーめーかーごーめー、かーごのなーかのとーりーはー……いーつーいーつー出ーやーるー。夜ー明ーけーのーばーんにー……つーるとかーめがすーべったー。後ろのしょー面だーあれっ?」
着物姿の子供たちが手を繋ぎ、輪を作って回る。輪の中には両手で顔を覆った、白い着物に赤い帯の少女が屈んでいた。ぼくは、その少女を知っていた。

「なぜ、君はその若さでぼくの前から消えてしまった?」
ぼくは、輪の中の彼女の手を引く。彼女の体が、ふわりと浮いた。その小さな体躯は、とても軽かった。
「君はぼくに言ったね。もし、ぼくより早く死んでしまったら白い着物を着てぼくに会いに来るって。ぼくは、毎日毎日君に会いたいと願っていたのに」
「………」
彼女はしばらく、無言だった。ぼくは、それを同意として受け取る。
「会いに来てくれたんだね」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ