夢拾参夜
□第玖夜
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もう、どれくらい掘ったのだろうか。口も段々と弛緩し、懐中電灯を銜えていられなくなってきた。唾液が零れ、顎が軋み、体が重くなる。手に幾つ肉刺が出来、幾つ潰れたことだれたことだろうか。ぼくには数える気力も無い。鉄製の小さなスコップは、問答無用でぼくの体力を奪っていった。
――カツ。
何かに当たった感覚。ぼくはスコップを捨て、夢中で土をかき出す。興奮しているせいか、土が爪に入ろうが潰れた肉刺に入ろうが気にならなかった。そのうち、段々と薄汚れた白い布が覗く。ぼくは、がつがつと貪る様に土をかき分けた。もうすぐ、もうすぐだ。早く、早く掘り出さなければ。白い布が現れたことによって、ぼくの興奮は更に増す。
かなりの勢いで掘り返したか、すぐにそれを出すことが出来た。淡く光っている様な白い肌は、土塗れだったが相変わらず美しかった。
あの日と何も変わらない、セルロイドの様な彼女。
「お帰り、ぼくの大事な女(ひと)」
ぼくは人形の彼女を抱きしめた。彼女の肢体が崩れることも厭わず。
目が覚めた。