☆B別館☆

□lunar eclipse
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「大佐、月がすごく赤い」

大佐の家の窓から空を眺めて話しかけた。

「月食の時によく見られる現象だな」

隣にやってきた大佐が俺の肩に手を置いて、抱き寄せられるまま大佐に寄り添う。

「なんか不思議だよな、こーゆーの」
「そうだな」

太陽に月に地球。
この3つが一直線にならんで初めて起こる現象。
今は赤く見えている月も、地球の大気状態によっては真っ暗になることもあるらしい。
その時の状態によって月でさえも見え方が変わるというのに…








あんたはいつでも俺を優しく包んでくれる…








俺はそっと大佐を見上げた。

「どうした?」

優しく見つめ返してくれる大佐を見てたら、顔に熱が集まるのが分かって

「なんでもないっ…///」

慌てて目を逸らしたけど…

「顔が赤いぞ?」
「う、うっせ///」

やっぱりバレてて。
だけどそれ以上は何も言わず、ただ黙って月を見ていた。

「次の月食もこうして一緒に見ような?」
「うん」

言われた言葉に素直に頷く。

「なぁ…大佐…?」
「ん?」
「月は太陽の光で輝いてるんだって」
「ああ、そうだな」

なんだ。
やっぱり知ってたんだ。

「ってことは…月は太陽がないと輝けないんだな」
「そういうことになるな」

俺は今、弟の体と自分の手足を取り戻すために旅をしてる。
目的があるから前に進めるし、諦めるつもりもない。
でもこの旅には終わりがある
何がなんでも目的を果たして終わらせないといけないんだ。
その後…
体を取り戻した後はどうしたらいい…?
さっき大佐は次の月食も一緒に見ようって言ってくれた。
その先は…?
ずっと先の未来まで、大佐は俺と一緒にいてくれるだろうか…

「大佐ぁ…」
「どうした」

いつもよりも甘えた声に大佐が笑う。
笑われたって今の俺は真剣だ。

「ずっと俺を照らしてて…」
「エド…」

俺はきっと月だ。
大佐っていう太陽がいてくれないと輝けない。
今だって…
大佐が守ってくれてるから自由に動けてる。
だから…

「君がイヤだと言っても、ずっと傍にいるよ」

強く抱きしめられて安心する。
大佐の腕の中はどうしてこんなにあったかいのかな…
髪を撫でる手が気持ちいい。

「私から言わせれば、君の方が太陽だと思うがな」
「んなことねぇよ」

そんなことあるわけないじゃん。

「君が帰ってきたら元気になるからな、私は」
「それはいえてるかも」

確かに俺が帰ってきたら、やたら書類の処理が早いって中尉が言ってた。

「だったら太陽ってより、栄養剤ってかんじじゃねぇか?」
「なるほど、だから定期的に取らないと体がもたないんだな」

俺の答えが気に入ったのか、うんうん頷いてる。
なんだかその姿がカワイイって思ってしまった。

「じゃあ早速補給してやるよ」

そう言って大佐の頭を引き寄せて…








口唇を重ねた。








重ねただけの口吻が、だんだん深いものになってくる。
地球の影に隠れていた月もだんだんその姿が見えてきたから。
今夜はこの月に…








2人の愛を誓おう…


















end.

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