サヴァ小説1

□宴の後で
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メノリの曲が終わり、シンゴの誕生パーティーは終わりを迎えた。

片付けを終えると、シンゴが大きくアクビをした。

ルナ「そろそろ休みましょう」
ハワード「…もう寝てんの居るぜ、ここに」

ハワードが指差す倒木イスの向こうには、頭の下に腕を差し入れて眠っているカオルの姿があった。

チャコ「よっぽどダンスでくたびれたんやな」

皆で声を押し殺して笑いあった。

シンゴ「ボクもそこで寝ちゃおーっと」
ハワード「んじゃ、ボクも〜っ」
ベル「オレは火の番してるよ、念のため」
シンゴ「ボク、夜中に交代するから、起こしてよ、ベル」
ハワード「お子様が、夜中に起きれるのか〜?」

ニヤリと傍らに立つシンゴを見下ろして笑う。

シンゴ「何いってんのっ!ボク何度も火の番してるよ!ハワードこそ、お子様だから、夜起きてられないんでしょっ!」
チャコ「あーもう、うるさいなぁ〜。二人でやれ〜火の番」
ルナ「それがいいかも」

ルナは口を突き出しにらみ合う二人の姿に苦笑いを浮かべた。

そして、ふあぁと思わずアクビをした。

シャアラ「ルナも休んだら?」
ルナ「ゴメ…、寝てるの見たら眠くなってきちゃって…。メノリは?」
メノリ「そうだな…。今日は話しすぎて疲れた…。先に休ませてもらう…おやすみ」

そしてルナとメノリ、そしてチャコは岩場の洞窟に向かっていった。
シンゴとハワードも静かに並んで眠りについた。

ベル「シャアラも休んでいいんだよ?」

焚き火を囲んで座るシャアラに声をかけた。

シャアラ「メノリの話聞いたらジーンとしちゃって、眠れそうにない…」
ベル「…そうだね…」

ベルは薪を火にくべた。
火の粉が舞い上がり、ゆらゆらと火が揺れた。

シャアラ「…お友達を亡くすなんて…、私だったら耐えられない…」

ベルはじっと火を見つめるシャアラを見やった。

ベル「…うん…」
  「だけど生きている以上、いつかはそういう事だってあるよ」
シャアラ「う、うん…。でも…ルナやベルや…、他の皆に何かあったら…、そう考えると、私…怖くて…」
  「だって皆…、大事な仲間だもの…」
ベル「ありがとう…シャアラ」

ベルの一言にシャアラはベルを見つめ、浮かべている優しい笑みに、頬を染めると俯いた。

シャアラ「うっ、ううん。w私はっ、ただ心配することしか出来なくてっ!
   あんなっ、巨大なカニのいる遺跡に…行くルナについて行く勇気がなくって…」
  「…ルナは大事なっ、大事な友達なのにっ!」
ベル「シャアラ…声、もっと落として…」
  「起きちゃうよ」

ベルにそう告げられて、シャアラは自分の後ろの砂浜に寝ている三人をあわてて見た。
ハワードがおなかを掻いてムニャムニャ口を動かしてる以外は変わりないようで、
ホっと息を吐くと、また焚き火へと目線を戻した。
横向きで臥してるカオルが目を覚ましたことには気づかなかった。

ベル「オレは…、シャアラが羨ましいよ…」

シャアラは「え?」と小さく声を上げた。

ベル「転校してきたばかりのルナと、すぐ親しくなって…、オレにはできないよ」
シャアラ「ううん。ルナは…特別なのよ」
ベル「…ハワードは…、オレにとって『はじめての友達』なんだ」
シャアラ「え?ロカA2に来る前の学校は?」
ベル「通信教育を受けていたんだ。他に…歳の近い子供は居なくって」
シャアラ「…そうだったの…」
ベル「オレは皆より年上だし、体も大きいから…、輪に入れなくってね…
  ほとんどの生徒が、初等部からの持ち上がりだったから…」
シャアラ「そうね、確かにそうだったね…」

シャアラは一年生の時のクラスを思い出していた。
顔見知りの人達で、すでにグループが出来上がっていて、シャアラもその輪に入れなかったのだ。
楽しいとは思えない学園生活であった。

ベル「カオルには、声をかけても振られちゃったし」

当時のことを思い出してるのか、ベルは苦々しく笑うのだ。

シャアラ「……」

入学式から少し経った頃のことだ。
クラスの女の子が『カオルに告白して無視された』と声を荒げて騒いでいたのを、シャアラは思い出した。

シャアラ「…男の子にもそうだったんだ…」

その呟きにベルは首を傾げて瞬きした。

ベル「? とにかく、友達を作るのにすっかり参ってるところに、ハワードが声を掛けてくれて…オレ…うれしかったんだ」
シャアラ「でもっ!随分ハワードにいじめられてたじゃない!」
ベル「あれは…、オレだって悪かったんだ…。だけど今は違う…、本当の友達になれたって…実感してるんだ」

シャアラはベルの幸せそうな笑顔に引き込まれて、小さく笑った。

シャアラ「良かったね…ベル…」

その会話をカオルはじっと聞き入っていた。

二人の話を聞くつもりはなかったが、目が覚めて寝付かれず、
かといってのこのこと起き出して話に加わるのも避けたく、
そのまま寝たふりを続けていたのだ。

 『友達』

その言葉の響きが苦手であった。

そして目の前に広がる、月の光に白く寄せては砕ける波を見やって、暗い眼差しを伏せた。


シルバーブロンドの少年の笑顔が

寂しそうな眼差しが重苦しい痛みを呼び起こすのだ。

その想いを抱きながらカオルは眠りの海へとおちていった。
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