大人のサヴァ小説

□ウエディング前夜
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【ウエディング前夜】


ルナとシャアラ、そしてチャコが女子専用に借りているコテージの寝室を覗くと、薄暗い部屋の中、メノリは三つ並ぶベットの一つに腰掛けていた。
俯くメノリの姿を目にして、二人と一匹は室内に入っていった。

「メノリ、元気を出して」
「そうよ、メノリ、せっかく皆で集まったんだし…」
「あのアホは気にせんと」

ルナとシャアラはメノリの横にそれぞれ並んで腰掛け、チャコは足元からメノリを見上げ、いつものからっと晴れたような笑みを浮かべた。

「うむ…、いや、大丈夫だ…」

メノリは小さく口元に笑みを浮かべると、そっとため息を漏らした。

「それにしても、すごい告白大会だったな」

先ほどの皆とのやりとりを思い出して、メノリは困った顔でルナを見やった。

「あ、そうね…、うん。ベルの告白は、ビ、ビックリしたなあ」
「わ、私も驚いたわ!でも、命がかかってたんだもの、仕方がないわ!」
「え、あ、あ、うん…」

今や婚約者であるベルのファーストキスの相手が、親友であるルナだったかもしれない、という話を聞いても、怒るわけでもないシャアラに、ルナは逆にドキドキしてきた。
だったかもしれない話に、シャアラの瞳がキラキラと輝いてきたことに、ルナはゴクリと生唾を飲み込んだ。

「ベルが人工呼吸をしなかったために、ルナが死んじゃったかもしれないのよ!」
「あ、シャアラ、落ち着いて…。でも、知らないうちにファーストキスを失ってるって言うのはキビシイと思うわ…」

あの時の滝落ちは、大事な父の形見のリュックが流されたのをとろうとした自分が招いた失敗で、ルナはベルに感謝はあれど、蘇生されたとしても文句は言えないと思った。

「そうだ、シャアラ、実際、蘇生処置をしないで、ルナは息を吹き返したと言っていたし…」
「そやなあ、心臓マッサージもできへんかったんやろな」
「ちょっ!チャコっ!」

シシシとイヤラシイ顔で笑うチャコに、ルナは真っ赤になって握った手を奮わした。

「まあ、いいではないか。ルナは想う相手と初めてのキスをしたのだろう?少々驚くことがあったっていいではないか」
「何言ってるのよ、チャコのせいで、皆に知られて、顔から火が出るとこだったわよ」
「ええやん。青春の1ページくらい、皆で共有したかてバチは当たらへん」
「もうー…!」

口ではチャコにはかなわないルナは、口を尖らして、ガクリと頭を垂れた。

「せっかくの機会やし、シャアラの初キッスの告白もしてみよか?」
「ええっ!?私っ!?」
「あ、そういえば、私も聞いたことなかったなあ」

チャコにより変わった話題に、ルナは興味に顔を明るくしてシャアラをメノリ越しに覗き込んだ。

「そうだな、ぜひ聞かせてくれ」
「もう〜、メノリまで!でも、恥ずかしいから、色々と言うのは嫌だわ。二人だけの思い出だし…」

人差し指を合わせ、モジモジしながら、シャアラは上目遣いに言う。

「出し惜しみせんと!いつの話や?」
「いつって、その…。サヴァイヴの無人島に、一年後に戻った時だったわ」
「ほお」
「へえ!」
「ほおおお、思い出あふれるあの島で、盛り上がったんか〜」
「やだ、もうー!」

シャアラは、膝に飛び乗ってきてニヤニヤと笑うチャコをドシっと押し出して、チャコは衝撃に隣のベッドまで飛んで転がっていった。

「やだ、思い出すとはずかしい〜」
「シャアラ、やはり、そういう時は『好きだ』とか言われるのだろうか?」
「う、うん、そうね、そうだったわー…」

照れに頬を赤く染めて、のぼせたような顔でシャアラはため息を漏らすように告げた。
シャアラの話に、瞳を翳らすメノリに、ルナは瞬きして、メノリの肩に手を置いた。

「メノリって、もしかしてキスした?」
「ひっ!?いや、私はっ!!」

あからさまにメノリは慌て、まっすぐに見つめるルナから逃れるように顔を背けた。
だが、反対側にはシャアラが居て、のぼせ顔はすでに失せて、興味深々の顔つきで、メノリの手を握り締めた。

「メノリ、せっかくだし、私、聞きたいわ」
「いや、話すことなど…」
「あるやろ?メノリも告白しよーや」

シャアラの衝撃に、目をクルクル回していたチャコも、回復して、隣のベッドに腰掛けて、実に楽しそうにメノリを見つめた。

「−−−−!!いや、あんなのは、許されないっ!」

突如立ち上がり、そう告げたメノリに、二人と一匹は唖然と見上げた。

「えっと、もしかして、相手はハワード?」

ルナの勘は大当たりだったらしく、白かったメノリの顔は一気に朱色に染まった。

「う、あ、その、私は、シャワーを浴びてくる、あ、あ、明日は早いしな」

逃げようと数歩踏み出したメノリを、ルナとシャアラは両手をそれぞれで掴んで留めた。

「そうそう、このコテージな、シャワーもあるけど、ジャグジーがあるんやで!島の露天風呂を思い出して、きっと気持ちええはずやで?三人で入ってきたらどうや?」

『チャコ、ナイス!』とルナとシャアラは口とウインクでチャコに合図をした。

「みんな、水着を持ってきたよね?楽しいよ〜、行こ、行こ」
「待て、私はシャワーで」

有無は認められず、メノリはしぶしぶと言った様子で、持ってきた水着に着替えさせられるのであった。
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