サヴァ小説2

□託された夢
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託された夢


ロカA2のエアポートまで、もう少しだ。
もうすぐオレたちの旅は終わる。
みんなで、一緒にコロニーに、自分たちの家へと帰還する。
誰ひとり欠くことなく、見知らぬ惑星の、自然ばかりの無人島に遭難した自分たちが、力を合わせて生き抜いて、ようやく辿り着いた。

目下に広がるのは、ロカA2のエアポートの光だ。
先導する巡視船の案内に従って、異星人から譲られた宇宙船を入港させていく。

『入港完了。帰還おめでとう!特にパイロットを務めたカオル、見事な操縦だった。では、これより機体の検査等を行う。よって待機をお願いする』

シートベルトを解除すると、仲間たちは一斉にコクピットから我先にと飛び出していった。
遠ざかっていく仲間たちの声を耳にしながら、ヘルメットを解除し、知らぬうちに詰め込んでいた息を深く吐き出し、体の力を抜きシートにもたれ込んだ。
エアポートを彩るさまざまな誘導の灯りを感慨深く見つめ、そして目を伏せた。

「…やり遂げた…オレは」
「ルイ…、みんなを守って、無事にコロニーに戻ってきた…」

ポンと肩に手を置かれ、カオルは目線を向けた。

「ルイ…!」

そこには訓練学校の制服を着込んだルイの姿があった。

「ルイ…、お前…」

馴染みある微笑を浮かべているルイを、カオルは驚きの眼差しで見入った。

「よくやったな、カオル。素晴らしいフライトだったよ。やっぱりキミは、ボクのライバルだ。追いつかれそうで、気の置けない…ね」
「すまない、ルイ…。オレはお前を…助けられなかった」
「いいんだよ、カオル。あの事故は、キミのせいじゃない」
「オレのくだらない意地が、あの事故を招いた。それに…、お前の家族に…何も伝えれなかった、オレは逃げてばかりで…」
「まだ、時間がいるんだ…。両親は、ボクをとても愛してくれてるから…、失った事実を、受け入れられないだけだよ。もう少し待って。父さんも母さんもわかっているんだ。誰のせいでもなかったって事をね…」
「…ルイ…」

苦悶の浮かぶカオルの瞳を見つめて、ルイは寂しそうな顔のまま笑みをとる。

「託した夢を、思い出してくれたね」
「ああ…」
「生きるんだ…、ボクの分も。生きて、ボクらの夢をかなえて」
「ああ、ルイ、オレはもう迷わない」
「うん」

すうっとルイの体が透けていくことに気づき、カオルは思わず席を立った。

「待て!ルイっ!!」

ルイの残像を追うように、カオルは手を伸ばした。
伸ばした手は、空を切るばかりで、もうそこにルイの姿は見出せなかった。

「必ず、オレたちの夢、叶えてみせる、ルイ…」

カオルは左の手を、想いをこめて握りこんだ。


《あとがき》
大変ご無沙汰しております。
二年前に、サヴァイヴアンソロ本に寄せた漫画の原本になります。
むかし長々と書いた文がありまして。それを清書して切り抜いたものなのですが、あれ?ルナが肩に手を置いて起こす展開ははしょったんだっけ?と久々に見て首をかしげてしまったり。
アンソロ本を手にされた方は、漫画との違いを堪能するには短かすぎですね・笑
6pくらいの漫画にするにはちょうどいいかもと思って、この話にしたんですが、場面が単調すぎて、あれこれ背景を練ったり、結構苦心したことを思い出します。



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