other

□王様ゲーム
1ページ/5ページ



●王様ゲーム



「これより第一回、わくわく!!王様ゲーム大会を開催します!!!」

「…」

ケータイをマイク代わりにして、満面の笑みで叫んだ和仁を、九条と康高は胡乱な目で見つめ、和仁の言葉に、わぁい!!と一人喜んだ三浦の頭を和田が無言で殴った。

「痛いっす、センパイっ」

殴られた頭を抱えて涙目で訴える三浦に、和田は低い声で「馬鹿は黙ってろ」と凄みをきかせる。
それに構わず和仁が笑顔を崩さないまま、どこからともなく割り箸が入った容器を取り出した。それは明らかに王様ゲームに必需品の「アレ」で、九条、和田、康高が青ざめる。

「いやぁ、みんなやる気みたいで嬉しいなぁ、オレ」

「お前、この空気読めよ」

明らかに凍りついたその場の雰囲気にそぐわぬ笑顔で、和田が突っ込むが、和仁は笑ったままだ。屋上には隆平、九条、和仁、康高、和田、三浦の6人が居た。

「大体何でこの面子なんだよ、」

「いやぁ、アンケート結果でさぁ。」

はぁ、と首を傾げる和田に、隣の九条は早くも逃げ腰だった。

「俺は…帰る」

「ちょっと待ったぁあ!!」

立ち上がった九条を、和田が慌てて引きとめる。
他の連中はともかく、愉快犯の和仁と、アホの子三浦のフォローは一体誰がするんだ!!俺には耐えられないと、和田は必死で九条にしがみ付いた。

「何しやがる、離せ!!」

「おめぇだけ逃がしてたまるか馬鹿野郎おおお!!!」

攻防戦を繰り広げる九条と和田をよそに、隆平と三浦は正座して、和仁の話を聞いている。

「良いか〜、このゲームは王様だ〜れだ、と言いながら好きな棒を取って、王様を決めるゲームなんだよ〜。そんで、王様の棒を当てた人は、王様以外の番号の書いてある棒を取った人に何でも命令出来て、番号が当たった人は何でも言うことを聞かなきゃならない恐ろしいゲームなんだよ〜。例えばオレが王様で三浦が5番で和田が3番だとしよう。それでオレが「5番と3番がちゅ〜をする」って命令すれば、三浦は和田とちゅ〜しなきゃいけないんだよぉ〜」

「こ…こえぇ」

「い…命がけのゲームっすね」

ごくり、と引きつった顔で唾を飲み込んだ三浦の背中に「どういう意味だ!!」と和田の罵声が飛んだが、誰も相手にはしない。

そんな中、今まで黙っていた康高が大きなため息を吐くと、何事も無かったように怯えている隆平の腕を掴んで立ち上がらせ、その肩を抱いて屋上の出口に向かいはじめた。

「ちょ!!やっくん!!何で帰ろうとしてんのさぁ〜!!」

「行くぞ隆平。聞く耳を持つな。」

真顔で帰ろうとした康高を和仁が必死で止める。

「ちょ〜っと〜!!サイトの企画なんだから帰られたら困るぅ〜」

「知りませんよ。第一この面子で…というかアンタが居る時点で不愉快です。」

そう言ってなおも帰ろうとする康高の首に腕をまわした和仁が、ひそひそと康高の耳に囁いた。

「いいのぉ〜?もしやっくんが王様になれたら、千葉君にあんなことやこんな事をしてもらえるんだよぉ〜」

「あんなことやそんなことは互いに思いが通じ合って了承を取ってから行う事に意味があります。こんなゲームであんなことやそんなことをされても嬉しくありません」

「…やっくんって、大正時代の人みたいだね」

呆れたように言う和仁の腕を振り払って、康高はメガネを押し上げて、どうも、と答えて振り返る。

「隆平、帰ろう」

言いながら、康高は絶句した。
隆平は、和田により脇に抱えられ、ぎゃんぎゃんと喚きながら、康高に助けを求めている。
そしてなぜか三浦が九条を押さえていた。

「ぎゃぁああ!!!何するんですか!!助けて康高、殺される〜!!」

「コラ比企!!こいつの命が惜しかったら言うことを聞くんだな!!」

「いや、そいつは惜しいですけど、…九条先輩はどうしたんですか」

「人質っす」

事も無げに言った三浦に辺りが静まり帰る。

へぇ…。誰のだろう。
遠い目をした康高に、隆平がぎゃんぎゃんと喚く姿を見て、和仁が笑った。

「はい決まり〜!もうみんな、腹くくってよ☆きっと楽しいゲームになるぜ!」

「…。」

康高の目は遠いうえに虚である。
嫌な予感しかしなかった。



こうして王様ゲームが始まった!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ