Penalty game

□PenaltyJ
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朝が来た。









けたたましい音楽が部屋中に響きわたり、朝の来訪を告げる。


毛布にくるまっていた三浦は、盛大ないびきをかきながら熟睡中だ。
日が昇って部屋は明るいが、まだ起きる時間には早いと本能的に感じているせいだろうか。
三浦は一定の睡眠時間に、ある程度の太陽の明るさがなければ目を覚まさない性質だった。
発信音であるケータイがチカチカと点滅しブルブルと震えながら「愛をとりもどせ」を懸命に奏でているが、やはり三浦が目を覚ますことはなかった。
なにか反応をしめすかと思いきや、むにゃむにゃと呟き、布団をはだけ、幸せそうに寝がえりをうつ。

しかしそれが災いした。

はだけた布団が足に絡まり、寝がえりをうった先はベッドの端。
バランスを崩した三浦はあえなく床へ転落したのだ。

かくして、ドスンというにぶい音が三浦家に響きわたったのである。

「…あれ」

これには流石の三浦も目を覚ました。
妙な体制のまま毛布を体に巻きつけた三浦がぼんやりとした顔で目を擦れば、慌ただしい足音が廊下から響いてきたかと思うと、ドンドン、とドアをノックする音が聞こえた。

「春樹さん!!どうしました!!」

「ご無事ですか!!」

緊迫した声色の男達の声とは対照的に、三浦は「あら〜…」と気の抜けた声を出した。

「ベッドから落ちた〜」

「お怪我は?」

「ない〜。ごめんなあ」

三浦がのんきな声で答えると、ドアの向こうにいた男たちは「わかりました。失礼します。」と声を掛けると、もと来た道を戻ってゆく。
去り際に「だから俺はベッドは反対だって言ったんだ…」と嘆きの声が聞こえた。

「ここんとこ毎日だろ。春哉さんの怒りが爆発する前になんとかしねぇとな」

「春樹さん、ただでさえ寝相がよくねぇからなあ…」

そして揃って溜息を吐いたようだったが、ベッドから落ちた本人は全く気にしていない。
三浦はあくびをしたのち、またひと眠りしようと床に転がったまま目を閉じた。

しかしそこでようやく、「youはshock!」というフレーズが耳に入ったのである。

それが目覚しではなく電話であることに気が付いた三浦は、寝ぼけ眼のまま、ベッドの上にあるケータイを腕だけ伸ばして探った。そして指に当たったケータイのストラップを引き寄せて本体を手にすると、ようやく通話のボタンを押したのだった。

「はいっす…」

ふにゃふにゃとした口調で電話に出ると、受話器の向こうから馴染みのある声が聞こえてきた。

『寝てただろ、おめぇ…。』

「あ、和田しぇんぱい、おふぁようございます。」

『おふぁようーじゃねぇ!何回「愛をとりもどせ」を聞いたと思ってんだ!!29回だぞ29回!!なんで留守電設定してねぇんだおめぇは!!お陰で16回目から口ずさんじまったじゃねぇか!!』

「おしいっす…あと一回で30回だったすね…」

『…そういうことを言いたいんじゃねぇ。…まぁ良い。手短に話す。今日屋上で9時から集会が決まった。一年に連絡を入れとけ。』

「集会…」

『和仁のお達しだ…。あの野郎、朝っぱらから胸糞わりぃ電話かけやがって…。それに通達するのにわざわざ俺とお前を指名してきやがった。』

受話器越しの言葉に、三浦は眉をひそめた。起きぬけで額にかかる茶色の前髪の間からのぞく大きな瞳を細め、不安そうな声を出す。

「罰ゲームに関しての集会っすか…。」

『それもあるだろろうが、今日のメインは他の祭りに関してだ。』

「祭りっすか?」

『ああ。一年に一度のデカい祭りだ。おめぇら一年坊主は経験がねぇからわかんねーかもしれねぇな。』

三浦は首を傾げた。祭りとは一体なんのことだろう。三浦は「うーん」と唸って考えたが、また眠くなりはじめる。
考えるため、目を閉じてしまったのがいけなかったらしい。

『10月末。うちの学校で催される学校行事っていや、なんだよ。』

和田の言葉に三浦はまどろんだ意識の中で「10がつまつの、がっこーぎょーじ…」と繰り返した。
瞼が重い。
そういえば昨日のホームルームで担任が何か言っていた。準備がどうとか。
その時三浦の頭の中は隆平でいっぱいで、まじめに聞いていたわけではないが、教室がにわかに沸いた、その行事とは…。

「あ。」

ようやく思い当たり、三浦は声をあげたが、それにわざわざ和田が取りあうことはない。

『とりあえず連絡しろ。一人残らず集合するようにって和仁の命令だ。』

「センパイ、祭りってもしかして…」

『詳しい事は学校で話す。じゃあまたあとでな。』

そう言うが早いか、三浦が口を開きかけた頃には、ケータイはもう切れてしまっていた。











「学園祭?」

隆平がすっとんきょうな声をあげると、紗希は「うん」と頷いた。
千葉家、朝の食卓に双子の兄妹は隣り合って座りながら、同時に味噌汁を飲んで、おたがいの顔を見合わせた。
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