□いえす!きりすと
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「クリスマスだな」
「クリスマスっすね」


イルミネーションやカップルでごったがえす都内の様子をテレビで見ながら、
取り残された感覚に陥りながら俺と利央は2人部屋にこもっていた。
なんで今日利央がここにいるかというと、理由は簡単。
外は雪が降っているのだ。だから練習も無い。


俗に言う、ホワイトクリスマスというやつ。


「暇だなぁ」
「あー俺野球してェ」
「おっま、たまの休日、俺といて嬉しくないのかよ」


横目でチラ、とこっちをみた利央。
そして一言。


「べーつにー」


やたら語尾を延ばす喋り方に、軽い苛立ちを覚えたが、そんなものすぐに静まった。
実際のところ、俺も別に嬉しいわけじゃない。
まぁ、嬉しくないわけでもないんだけど(誰だ、素直じゃないって思った奴)
俺こんなんでも一応高校生なんだけどなぁ、と寂しくなり若さが無いことに悲しくなった。
そんな俺の前で利央は近くにあった雑誌を持ち出し読み始めた。


「日本人はさぁ、クリスマスを勘違いしてますよねェ」


急に利央の口からシビアな話題が飛び出し、俺は一瞬目を丸くした。
こいつ、脳みそあったんだな。


「キリストが生まれた日なんだから、静かにお祈りするべきっしょ」
「利央にしては、まともなこと言ったな。今」
「どーゆーこと!慎吾さんうっぜ!」


こっちをギロリと睨み付け、利央は雑誌に目を戻した。
ホント教育がなってねーな。タケの奴、何やってんだ。
そしてまた利央は日本人のクリスマスに対してブツブツ言い始めた。
俺はそれを聞き流している。と、「どう思います?」と答えを要求された。


「うーん、お前は本当にクリスチャンだな」
「質問とちげーすよ」
「いや、お前はえらいよ」


そう褒めると、照れ隠しなのか拗ねてしまった。
しかし顔をみるとまんざらでもなさそうだ。分かりやすい奴。


「そんな利央に慎吾さんから提案」
「面白いことすか?」
「いえーす!」
「何?」


「キリストの誕生を祝って、クリスマスエッ「バッカじゃないのぉ!」


言い終える前に、利央は俺の言葉をさえぎった。
んっだよ、いい案なのに!


「慎吾さん、万年発情期じゃないですか!」
「言ってくれるなぁおい」
「クリスマスは神聖なものだって言ってるそばからそうなんだもんなぁ。
 慎吾さんだって一応クリスチャンでしょ」
「まぁ、一応キリスト系統の高校生やってるな」


利央は大きな溜息をひとつ付くと、生意気にも「聖書読み直すべきっすよ」といった。


「うっせ。聖書だのなんだの、俺には関係ないのです」


そのまま俺は利央のそばへ寄っていき、押し倒した。


「キリストに呪われちゃえばいいよ、慎吾さん」
「仏様が守ってくれるからかまわないね」




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