□無自覚の恋
1ページ/1ページ

自分にとってロックオン・ストラトスという人間は、かなり異色だった。
長くも短くもない時間を共有してきたが、自分の中の彼の存在に違和感を感じて仕方ない。
イライラする、けど。
心地良ささえ覚えていて。
これがなんなのか、今の自分には皆目検討もつかなかった。

自室でそんなことを考えているとどうにも頭が混乱する。
気分転換にでもと部屋を出ると、丁度タイミングを諮ったようにロックオンが呼びかけて来た。
今はあまり人と話したくはない。しかも、それが彼なら尚。

「最近のお前、なんか変わったな」

意味の分からない事を口にする彼に僕は眉を潜めた。
変わった?僕が?

「ほら今もよ、色々顔に出てる」
「「そんなことはない」」

ロックオンと自分の声が重なり、ほらな、とロックオンが笑った。
ほら、というのはなんなんだ。
解らない、解らなくてイライラする。
ロックオンに対しても、自分に対しても。

「ま、いいんじゃねーの」
「何がだ」
「思ってる事が顔に出てもってことだよ。それが本当のティエリアなら、尚更な」

長い腕が伸びてきて、肩に手を乗せられる。
払おうとしたのに身体が動かなかったことに、自分は本当に前と変わってしまったのだろうか、と。
それでも未だ、認めたくなくて。

「どうせなら素のティエリアが見たい」

目をみてそう告げられ、内心かなり動揺した。
しかし動け動けと念じていた身体がようやく動き、その腕を振り払う事ができた。
それでもロックオンの表情は変わらずだったのだが。
これ以上一緒にいると本当におかしくなる。
もう嫌だ、と踵を返したとき、無意識に自分が何かを呟いていた。

「ん?」
「・・・なんでもない」

なんでもない、というより、無意識だったから覚えていないというのが正直のところだが。
ふ、と漏らした彼の笑い声を背に、逃げるように僕はその場を離れた。


無自覚の恋
(きみにならなんて、)
(しらない、しらない。なにもしらない)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ