Others
□WILD LIFE
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ノスタルジー
「いってらっしゃい」
そう言った君の顔を覚えている。
今でこそ、励みとして思い出すようになったが、オーストラリアに来たばかりの頃は、その明るい笑顔が恋しくてたまらず、何度も帰国を考えた。
近況を知らせる手紙は、自分を踏みとどまらせるため。
俺も頑張ってるぜ、という君の返事を見て、また頑張れる。
密かに、オーストラリアへの出張がある、という話がないかと期待していたりもするのだけど。
「手紙ですか?」
横から、現地のスタッフが尋ねてくる。
「ええ」
送られてきた手紙を差し出すと、彼は手紙よりも僕の顔をジッと見て、それからニヤリと笑った。
「オレは日本語読めませんけど、その人、先生の好きな人でしょう?」
「……すごいなぁ、何で分かったんですか?」
「だって先生、顔がふやけてます」
そんな顔、コアラの前でもしてないですよと指摘された。
動物たちに対して、自分が如何に締まりのない表情でいるかは知っている。
それ以上だと言うなら、相当だらしないはずだ。気をつけよう。
「それにしても、先生にそんな人がいたなんて聞いたら、女性スタッフはガッカリしますね」
「え?いや、片思いのようなものですから」
「へぇ!…けどわざわざ手紙をくれるなら、十分脈あるんじゃないですか?」
そういうわけではないだろう。
しかし説明は面倒で、それにもったいないから、そうかなぁとだけ答えておく。
まぁ、でも。
「ラブレター、とか。送ってみましょうか」
遠くの君を想って。
鉄生くんへ
END
言い訳します。
賀集先生が鉄生を何て呼ぶのか分からない。手紙って鉄生は返事してるの?電話とかメールはしないの?ノスタルジーって師匠はオーストラリアにいる必要があるよね。
そんな感じで、鉄生いません。
次こそは、師匠贔屓な鉄生を書きたいな。
20080502