Others
□WILD LIFE
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パズル
一つずつピースをはめていく作業は嫌いじゃない。
僕は二つのパズルを作った。
計画と、妨害。
兄の描く完成図を思い浮かべ、真似る。
そして出来上がったその裏側に、僕の完成図を描いてやった。
僕ら兄弟のパズルには、どちらにも大きな一つのピースがある。
僕は今、新たなパズルを作るためにそれを手にしていた。
「ねぇ、鉄生」
彼にとって、名前を呼ばれるのは何でもないことだろう。
「何だよ、巧」
僕だって、名前で呼ばれることは何てことない。普通だ。
でも、彼が僕以外の人を名前で呼ぶのを、聞いたことがない。だから、特別。
「鉄生、僕が君を好きだって言ったらどうする?」
「?……俺も好きだって言う」
「だと思った」
「何だよ?ダメなのか?」
ダメだよ。
だって君の言う「好き」は、僕の欲しい「好き」じゃない。
僕は、次のパズルをどれくらいの大きさにするか、計りかねていた。
すぐ完成できるようにも、その逆にも思えるから、ど真ん中にでっかい『鉄生』というピースを置いたまま考える。
「鉄生はさ、彼女と僕、どっちの方が好き?」
「はぁ?どっちって……比べようがなくねぇ?」
「……比べようがないくらい、彼女が好きってこと?」
「ち、違っ!俺はただ、比べる対象同士じゃねぇと思って…」
ここで違うと言ってしまうくらいなら、まだまだ平気そうか。
鉄生ならきっと、「彼女としても友達としても好きだからな」くらいは言うようになるだろう。
それなら、焦る必要はない。
帰国してから、僕が不在の間に鉄生を囲む人間が増えていることで、酷く苛立っていた。
せっかく邪魔だった兄がいなくなったのに、鉄生には彼女がいる。
相変わらず、陵刀教授の考えは読めないけど、僕の計画の邪魔はさせない。
「巧?」
「何?鉄生」
「怒ってんのか?」
「さあ?どうだろう?」
困って、頭を抱える鉄生。
僕の質問にちゃんと答えようとしてるんだろうけど、別に彼女がどんな風に好きかなんて興味ない。
「僕がいない間、たくさんのことがあったんだろ?」
「ああ」
「全部教えてよ」
まずはピース集めから。
完成図は見えた。
巧はオフィシャル腹黒よね。
鉄生の出番が少ないのは、そろそろ本気で反省する必要があると思う。
攻→→→受
が好きなもんで…。
20080616