Others

□おおきく振りかぶって
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好きの意味



「ね、三橋って阿部のこと好き?」

「えっ、えっ!?…あわっ…あ…えぇ!?」

「おーおー、慌てまくってる」

放課後の部活動。
グラウンドを整備する三橋と栄口に、田島が寄って来て尋ねた。

「阿部のこと、どう思う?」

「どっどど…ど…って……好きっ…だけどっ…」

キラキラ目を輝かせながら迫ってくる田島に押されて、しどろもどろになりながら答えた。

「好き?好きなのかっ!?」

「うっ…うん…?」

今にも掴みかかってきそうな勢いの田島に向かってコクコクと首と縦に振る三橋。



「あーーーべぇーーーーーっ!!!」


「!!??」

「田島っ?」

いきなり背を向けて叫んだ田島に、三橋と栄口が驚く。

田島が叫んだ方向には監督と花井、そして阿部がいた。
その阿部が、田島に叫び呼びされて振り向く。

「三橋がっ!お前のこと好きだってよーーーっ!!」

「った、たたた田島くんっ!?」

何を言ってるのか、と三橋がグラウンド整備に使っていたトンボを手から落として一人グルグル目を回す。
隣にいた栄口も、田島の奇行に呆気に取られていた。

と、その時


「たーじーまぁーーーっ!!」


猛スピードで駆け寄ってきた阿部。
爽やかな高校野球児には あるまじき形相で近寄って来る。

「おー、阿部。三橋が好きだってよ」

「おっ、おい田島っ」

我に返った栄口が慌てて田島のシャツを引っ張った。

そんなこと阿部に言ってやるなよな。
という阿部と(主に)三橋の恥を思っての意味だったのだが、しかし栄口の考えは甘かった…。




「それマジか?」

「マジだって!」

「………は?」


予想外の阿部の言葉に再び栄口は呆気に取られる。

「そっかぁー。んじゃ、あん時のは その場の流れってわけじゃなかったんだな」

「良かったな〜」

「おぉ!お前に頼んで良かったわ。サンキュー」

「どういたしましてー」

「えっ?待て待て!何、今の?」

自分と三橋から離れて行こうとする二人を引き止めた。
すると阿部が三橋の方を向いて、

「俺もお前が好きだからなっ」

と爽やかに言ってのけてから、監督と花井の元へ走って戻って行った。
当の三橋はというと、目の前に阿部がいることにも気付かずに未だ思考をグルグルさせている。

どうやら阿部くん、三橋が恋愛対象として好きな事を隠す気ないらしい。


その様子を見ての、栄口の思い。

『三橋の好きって友達って意味でだろーな…』


頑張れ、三橋っ!


心の内でエールを送りつつ、あえて口を挟む気にはなれない栄口だった。




END






後書
初・おお振り小説…こんなんですが。


050629

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