REBORN!

□貴方の笑顔が咲く頃に
1ページ/1ページ

少し冷え切る外の空気。
頬に当たり寒いと感じるがそれ以上に寂しいと感じる。
今日で此処に通うのも最後になるだろう並中の校舎。
いつも通った母校との別れを惜しむ。もう一生着ることのない制服に身を包み、手には卒業証書を持ち、この学校をこよなく愛すあの人の元へと歩く。


「今日で君も卒業かい?早いね。」
クールな顔をしながら私を見る雲雀さんの瞳。だが、その瞳にはいつもの少し私に向ける笑みはなく、怒っているようにも見える。
彼なりに平然を装っているつもりだろうがバレバレだ。伊達に貴方を見ていたわけではない。
「怒っていますか?」
胸に秘めていた疑問を打ち明ける。風が私達の間をくぐり抜ける。風の性か、それとも本心を知られた性か少し曇らせる雲雀さんの顔を見つめる。素直な返事を聞きたいから。

「怒っているか……。正直に言うとムカついている。僕より先に卒業しようとしていることに」
嫌、それは貴方が卒業しない性で決して私が悪いわけではない。そして何よりそれって単に自分勝手な理由じゃないのか。
「何嫌そうな顔してるの君。ハァ……でもその理由が君の卒業が悲しいことなんて僕はどうかしてるね。」
片手で顔を覆う雲雀さん。雲雀さんが私の卒業を悲しむなんて意外だ。天地がひっくり返ってもありえないと思ってた。
でも、そんな些細なことが嬉しいなんて私はどうかしてる。にやける顔を引き締めることは難しく、私は雲雀さんに頭を軽く叩かれた。……少しジンジンしてるし、痛い。
「君、馬鹿かい。何喜んでんの?そんなに噛み殺されたいの。」
最後の最後まで言うお決まりの台詞。最後に噛み殺されるなんて真っ平御免だ。あぁ、最後まで平凡に卒業することが出来ない自分って何処まで可哀相なのだろうと惨めになる。
それこそ悲しくなるよ。

でも雲雀さんに悲しんで貰える卒業なんて多分これから先も私一人なのだろう。そう考えると世界で1番祝福されていると思えてしまうのが不思議だ。そこまで雲雀さんの存在が大きいのだろうか。

世界で1番祝福されるのは自分だ。
それは誰しもが願うことで誰もが叶う最高な願い事。
あぁ、今日で見るのも最後になる桜の木に願おう。
きっとこの先も貴方に笑顔が咲くようにと。

貴方の笑顔が咲く頃に

(おめでとう、たった一言)
(君に言えれば良かった)




卒業シーズンなんでやってみました

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ