REBORN!

□素直な言葉が言えなくて
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卒業式が終わり体育館から飛び出した。体育館にはまだ別れを惜しむ生徒たちや祝福する先生や親たちで溢れ返っていた。
私も論外ではない。
元に先程まで友達と最後の言葉を言っていた。
だが、そんなことはどうでもいい。早くあの人を見つけ出す。今心にあるのはそれだけ。校舎裏を回り保健室に行き、教室を巡り、残すところは屋上だけとなった。
最上階に繋がる少し汚い階段。だが、それも今は気にしない。この階段もあの人の元に繋がるのならばガラスの階段同然。さながら私はシンデレラだろう。
「居た。」
屋上の扉を開け、煙草をふかす奴の姿を見た。
コイツホントに中学生か?と疑いたくなるくらい堂々とした態度。女子からの人気も高いが、クラスの男子と喋っているときは歳相応。中学生らしい顔付きになる。初めて目にしたときはこんな顔もするんだと自分の目を疑ったりもした。
「何だお前かよ。ていうか今日卒業式だったんだってな。」
他人事の様にいうコイツに少しカチンときた。まぁ、そうだコイツはこんな事には興味がないし、他人だが少しくらいは祝えよ。と思いたくもなった。
「そうですよ。どうせ獄寺くんには知ったこっちゃないですよ。」
拗ねたように言う自分に嫌気がさす。
可愛くない。
もう少し、祝って欲しい一言だけでも何か言葉が欲しいと言えないのだろうかと思ってしまう。
情けなさに溜息を小さくつく。困らせたくないのに自分勝手な感情で彼を傷付けてしまったかもしれないと不安になっているとフワリと温かいぬくもりに包まれた。
「あんまこういうの言ったことねぇからわかんねぇけど……お、おめでと。」
恥ずかしげに真っ赤な顔を隠す獄寺にクスリと笑ってしまう。
そのたった一言に彼はどれだけの思いを込めてくれたのだろう。
あぁ、これほどの幸せはもう訪れることはないだろう。あなたの言葉を聞けて本当に良かった。

素直な言葉が言えなくて

(慣れねぇ事はしねぇ方がいいな)
(でも嬉しかったよ)


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