REBORN!

□遅すぎたbride
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殺風景な部屋の一室。
辺りは必要最低限の物しか置いておらず、まるで生活感というものが感じられない。
その部屋の椅子に腰掛ける一人の陰が日の光に照らされて地面に映る。
梅雨の季節も終わりに近づき、温かい風が流れる。
ガチャッと音を立ててドアノブが曲がった。
すたすたと規則正しく歩き、椅子に座っている者に近づく。

「珍しいね、君が此処に来るなんて。」

「今日はあることを言いに来たの。」

「あること?」
すらっと伸びた長い足を組み替える。
此処に彼女が来るのはいつぶりだろう。
かなり昔に感じるのは僕が歳をとったからかなと微笑する。

「あのね恭弥、私結婚するんだ」


まるで曇りが無いようなその嬉しそうな明るい笑顔。
「だから恭弥もいい人見つけて幸せになってね。」

昔は僕に向けられていたその笑顔が今は僕ではない他の誰かの物だと思ったら僕は一瞬それを奪ってやろうかという気になった。

それを粉々に砕いて二度と僕の前から離れられないようにしてやろうと。そう思った。

でも、

突如となく彼女の目から涙が一筋流れ出す。
何故、と。
泣きたいのはこっちなのに。

「全く君は嘘と笑い方が下手だね。」

そういい彼女の腰を引き、抱きしめる。
この温もりが明日からは知らない誰かの物になるんだ。
ならばそれまで、今日1日くらいは僕の物でいてください。


「ごめんね。」

こんな言葉もう今は遅いと思うけどそれでも君の心には残っていてほしい。

誰かの物になるその前まで君の心に居続けた人として。

そして、君を不幸にした者として。


遅すぎたbride

(君を不幸にしたのはこの僕。)
(君を迎えにいけなかった愚かな僕を許さないで)


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