スマブラ小説

□彼と風邪と狩り
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…いきなりですが。
リンクが、風邪をひきました。

「げほっげほっ!はー…」
「大丈夫かい?リンク!?」
「まぁね…あー、やっぱ川になんて潜るんじゃなかった…」

本人いわく、『今月ピンチで魚捕りに行ったら川が思ったより冷たくて、風邪ひいた。』だそうで。
さすが、勇気のトライフォースの継承者はやる事が違うね。
大分暖かくなってきたけどまだまだ水とふれあうには早過ぎるこの季節。
そんな時期に家計のためだけに川に潜る猛者を、勇者と呼ばずに何と呼ぼうか?

「勇気あるねーリンク。今川になんて潜ったら風邪ひくって分かってたんだろうに。」
「風邪なんて全然ひかなかったからね、大丈夫だと思ってたんだけど…っ!げほっ!」

げほげほと、再び咳込むリンクの背中をさすってやる。
平然としているように見えるが意外と体調は悪いらしい。

「そういえばリンク。ドクターから薬貰ってきたんだけど。何か食べれそう?」
「うん…ありがと。冷蔵庫ん中にご飯入ってるからレンジで温めて…お茶も沸かして…」
「ん。」

こういう時に、何か気のきいた物を作ってあげれたらいいのだけれど、生憎料理の腕前はゼロに等しい。
せめて少しでも食べやすいようにお茶漬けを作り、リンクの元へと持っていく。

「あ、ありがとう…いただきます…」

ぱんっ、と手を合わせ少しずつ食べていく。
スプーンで掬って口に入れるという動作も、今のリンクにとっては重労働らしい。

「…食べさせてあげようか?」
「……うん、ゴメン…」

見兼ねて手を差し延べると、彼にしては珍しいことに素直に甘えてきた。
少しずつ冷ましては食べさせ、飲み込み終わったあたりでまた食べさせる。

「あ、これで終わりだよ。」
「ん…ごちそうさま。」

最後の一口を食べ終え、ぺこっと一礼。こういう律義なところが可愛らしい。
薬もきちんと飲み、再びベットに横になる。

「おやすみ、リンク。」
「うん…おやすみ。」

何だか、弱っているところに付け込んでいるような気もして後ろめたいが、好意に好意で返してくれるというのは大変嬉しいと思う。
そんな癒された気分でリンクの部屋を出たその瞬間。

「「マルス!リンクは!?」」


わぁ煩い。

群がってくる人、動物、何か。

恐らく、リンクが心配なのが2割、ご飯が心配なのが7割、野次馬が1割、ぐらいの割合だろう。

「色々心配なのは分かるけど、此処で騒ぐのは感心しないな。取り敢えず場所を移そうじゃないか?」

バサリとマントを翻し、今日最大の危機をどう乗り越えるか、思案しながら歩きだす。
他の者達もそれぞれ神妙な面持ちだ。


――――食料危機――


頼みの綱であるリンクが倒れた今、僕らだけで立ち向かわなければいけない。

「各自、得物を持ってリビングに来たまえ。」

集まるのは酒場ではないが、久々の狩りに身が震える。

「「おーー!!」」


こうして、
僕らの0円生活が始まった。

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