スマブラ小説
□雨の日の災厄
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ザァァア―――――…
「あ…今日も雨かぁ……」
まだ、空も白み始めたばかりの早朝のスマブラ僚に、雨の音が響く。
外を見れば、見事な土砂降り。
…――これは、今日一日止んでくれそうにない……
「…はぁー……」
激しい雨音に、青年の溜め息が僅かに混じって霧散した。
「…どうしたんだい、リンク?珍しく憂鬱そうじゃないか?」
ポン、と何者かの手が肩に触れる。振り向けば、マルスがソファーの背もたれ越しに満面の笑みを浮かべていた。
「あー…マルス、おはよー…」
欝な時には、正直ウザイ。
適当に受け流す気で応じる。
「……せめて会話くらいは成立させてくれないか?」
「うーん…雨だからさぁ…」
「雨だから憂鬱?」
「うんー…」
我ながらぐたぐたな返事だ。
最近、これで怒らないマルスに少し尊敬の念が湧いてきた。
「雨、嫌いなのかい?」
「んー、そうじゃないんだけどさぁ……」
ズルズルとソファーの上でうなだれるリンクの隣に、ギシリとマルスが腰掛ける。
あ、接近を許してしまった……
「分かった、洗濯物でしょ?」
「ああ、それもあるねぇ…」
「んー…何がそんなに憂鬱なのかな?ただの雨じゃ―――」
ガシャ、パリーン
「わぁー!花瓶飛んだー!!」
「ネスの馬鹿!室内でバットなんか振り回してるから!」
「な、子リンだってブーメランで窓硝子割ってたじゃん!」
「……二人共、充分悪いと思うんだが。」
「「ロイは黙ってて!!」」
「………」
「―――…原因、アレかい?」
「ご明答。」
外に出られない変わりに、室内で暴れ回る子供達+a。
そのテロ顔負けの破壊活動は、リンクの怒りを呼び起こすのには充分過ぎる物だった。
「君達……暴れるなら乱闘でもしてろって言ったの、覚えてるよね……?」
「げ、リン兄。」
「うわ、リン兄ちゃん。」
「やば、リンク。」
怒気と殺気を十二分に含んだ、ヤバ気なリンクの声音に固まる子リン、ネス、そしてロイ。
ぴくっと動いたリンクのこめかみに反応するように、サァ―――ッと青ざめていく。
そして。
『ごめんなさい!!』
3人揃って華麗なジャンピング土下座。
その見事なシンクロ具合に、隣でマルスが口笛を吹く……が、
「きちんと後始末しろよ!!」
『ハイッ!』
それしきで怒りが収まるワケも無く。
風のごとき勢いで去っていく、馬鹿3人の背中を睨みながら舌打ち一つ。
ドスッという音と共に、リンクの拳がソファーにめり込んだ。
「なるほどぉ…そりゃ憂鬱にもなるワケだ。」
「そう……でも馬鹿はあいつ等だけじゃない…」
きっと今頃、同じような事が僚のあちこちで起こっているハズだろう。
修復費用が半端ない。
さて、どうしたものか。
「分かった…なら僕が一肌脱ごうじゃないか!」
「国家資金でも下ろしてきてくれるの!?」
「リーンク!それは横流しって言って立派な犯罪だから!」
急激に煌めいたリンクの瞳に、マルスのツッコミが入る。
珍しく、ボケとツッコミが反転している。
「分かってる、バレなきゃいいんでしょ?」
「純粋な瞳で濁りきったセリフを吐かないでくれたまえ!」
グッ★という効果と共に立てられたリンクの親指を、視界の外に無理矢理押し出す。
スマブラメンバーの主婦役は、ここまで追い詰められていたのか。
「じゃあ何?皆の給料から修復費用天引きする?」
「それはいい案だが、ま ず は破壊を阻止するところから始めてみないかい?」
「……阻止?」
「そう、阻止するんだ。奴らの横暴を。」
ギュッとリンクの両手を握り、熱く語ったマルスの瞳には……
何かいい悪戯を思い付いた子供のような、少し危険を含んだ光が見え隠れしていた。