スマブラ小説
□雨の日の災厄
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「なぁフォックス、早撃ちでもしないか?」
所変わって大ホール。
ここにも一人危険思考の持ち主がいた。
「あー…?ファルコ、ここ室内だぞ?」
流石にフォックスは止めようとするが、ファルコが言う事を聞くハズも無く……
「暇なんだよ、外は雨だし……おらぁ、いくぜ!!」
「おいファル……」
「御用改めであーる!!」
『はぁ!?』
ファルコが目にも留まらぬ勢いでブラスターを引き抜き、今まさに撃とうとしたその刹那。
キラリと閃光が走ったかと思うと同時に、ファルコの嘴スレスレのところをマルスの剣が掠めていった。
「うぉおっ!て、テメー何しやがる!危ねぇじゃねーか!?」
「お前だって室内でブラスター撃とうとしてたじゃないか…」
「ブラスター止めるのに剣持ち出したら、どっちもどっちだろがっ!!」
「うっせーんだよ鳥が……」
ギャーギャー喚き散らすファルコに何故か逆切れするマルス。
どすの効いたその声音に、二人が固まる。
そしてその後ろから、リンクがひょっこりと顔を出し、同じくどすの効いた声で、とどめの一言。
「これから、破壊された箇所の修繕費用は君達の給料から天引きするから、気 を つ け て……ね?」
『……え…』
充分過ぎる脅しと、じゃあっと言う黒い笑みと共に、二人はあっという間に去っていった。
『……何だ、アレ…』
後には、口をぽっかりと開けたまま呆然と立ち尽くすファルコとフォックスだけが残された。
「結構効いたみたいだね!これはいけるかもよリンク!」
「そうだね、何の能も無い、単純かつ手っ取り早い方法だからね!よく考えついたねマルス!えらいえらい。」
「リンク…褒められてる気がしない…むしろけなされてる?」
「当たり前じゃん、さぁ次行くよ!」
「…………」
廊下を走りながら、リンクの毒舌がマルスに牙を剥く。
気のせいか、マルスの足取りが重くなった気がする。
「ほら、遅い!」
「……なんか、僕泣きたい…」
キラリと何かが、空に舞った。
「御用改めであぁーるっ!!」
バンッ。
「うわぁ、リンクさん何の遊びですかぁ?楽しそうですね。」
「な、何の騒ぎだ?」
「賑やかだな…」
次にリンク達が飛び込んだのは格技場。
そこには、遊びと訓練を目的にした人々が集まっていた。
翼があるのにトランポリンで跳ねているピット、バトミントンのラケット片手に殺気立つルカリオとミュウツー、黙々と剣を振るうメタナイト…
そして、冷や汗ダラダラで縮こまるアイク。
直感的に、リンクはアイクの元へ向かう。
「……アイク…」
「ななな、なんだリンク?」
挙動不審。
あ、この人何かしたな。
…てか、あの訓練馬鹿のアイクが剣も持たずに此処で何を……
―――…剣も持たずに?
「アイク、剣は……ラグネルは一体どうしたの?」
「え…と……」
気まずそうに苦笑い。
時折ちらりとメタナイトの方を見ているが、当のメタナイトは我関せずという態度を貫き通している。
大方アイクがメタナイトを誘って訓練しにきたんだろうね。
今は無きラグネルと共に?
「ラグネルは?」
「あは、は…は?」
アイクの引き攣った顔と、おもむろに突き立てられた人差し指が、ゆっくりと天井を向く。
釣られて顔を上げ、絶句した。
「は……?」
Raguneru in the ceiling.
ラグネルが天井の中に入っている。
――…What happened?
――…何が起こったの?
I don't understand.
僕には理解できないよ。
突然の事態に、頭の中で自国語 (ハイラル語)が反芻する。
リンクの頭上には、陽光を受けきらびやかに輝くラグネル。
…天井に『入っている』のだ。
青空が、微かに見える。
「…アイクが…戦いに夢中になって……」
メタナイトの声が静かな格技場に響く。
「"天っ空!!"…って……」
それで、グサリと。
「………」
「す、済まない……?」
……ゆらり
リンクが長い金髪を揺らして、アイクににじり寄った。