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□わがままひめ
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あ、あの後姿は。




わがままひめ




「ゴリィィィ!!」


神楽の大声に、ぎょっとしたような表情で振り向く近藤。


「ちょ、チャイナさん!この人ごみでそれは言っちゃぁダメだよ!」


慌ててこっちに駆け寄ってきて、その長身を折り曲げて神楽の耳元で囁く。


泣く子も黙る真選組。


その大将が、少女に『ゴリ』なんて呼ばれているのだ。


通行人が興味を示しても、仕方のないことだろう。


「お前がゴリで振り向くからいけないネ」


「そこで振り向かなきゃあ、次に何言われるか分からないじゃん!」


「お前私を何だと思ってるアルか!」


こそこそといい合う二人を、通行人はじろじろ見ながら通り過ぎていく。


さすがにここじゃあまずいと思ったのか、近藤は曲げていた背を伸ばして


「とりあえず、ここで会ったのも何かの縁ってな」


きょろきょろと辺りを見回して、ちょいちょいと指をさした。


「なんか、奢るよ」


「ファミレスアルか。色気もへったくれも無いアル。だからお前はモテないんだヨ」


「え、そう?」


困ったようにかりかりとうなじを掻く近藤を、神楽はじっと見上げた。


(ゴリは、ちゃんと私の言うこと真面目に聞いてくれるネ)


子供の言うことだからと、適当にあしらったりしない。


そういうところを、神楽はちょびっとだけ気に入っていたりする。


だから。


「仕方無いネ。今日はファミレスで勘弁してやるヨ」













「あ、ゴリぃ。そういえば私、今日誕生日アル」


もごもごとくぐもった声で言う神楽の周りには、空いた皿がいっぱい。


店員が下げても下げても次の皿が空くもんだから、もう店員もすっかり諦めてしまったらしい。


そして大食い少女の向いに座る近藤は、コーヒー一杯だけでねばっていた。


「…あ、そうなの。よかったねえ」


こんな言葉しか出てこない。


上の空の近藤の頭の中は、すでに会計のことでいっぱいだった。


しかしその返答に納得のいかなかった神楽が、近藤にビシッとフォークを突き付けてすごむ。


「ゴリ、誕生日アルヨ?私が生まれた日アルヨ?もっとほかに言うことないんかい」


そこでくわっと目を剥く。


「姉御の誕生日には指輪用意しといて、私には何も無しアルか!!」


「ちょ、何故それを!?」


大慌ての近藤を見て満足したのか、神楽の口元が憎らしげにつりあがる。


少女は正座を崩して足を組むと、フォークで皿をこつんと叩いて口を開いた。


「私をなめてもらっちゃあ困るアル」


「…はあ」


「姉御の誕生日は、万事屋は姉御の誕生ぱーちーの準備でおおわらわだったアル。で、私は生クリームが足りないからって、買出しに出されたわけヨ」


「なるほど」


「私は寄り道せず、真っ直ぐスーパーに向かったネ。でもその途中で、お前を見たアルヨ、ゴリ」


「マジでか!」


ふふん、と不敵に笑って神楽は続けた。


「お前は、なんか見てたら唾吐きかけたくなるくらい浮かれてたアル。公園のベンチに座ってたな、たしか」


「…ああ、たしかに座ってた」


「ダロ?で、袖からちっこい箱だして、ぱかって開けた。そしたら、きらって、なんか光ったから私は不思議に思って目をこらしたヨ」


そこで近藤の表情が曇った。


それを確認して、神楽はちょっと間をおいてから


「そしたらなんとさ、すっごいきれいな指輪だったアル。私、すぐピンときたヨ、ピンと」


ピンと、というところを強調して、神楽はゆっくり続けた。


「あれが、姉御の誕生日プレゼントだってな。誕生日に指輪プレゼントなんて、青臭いことやるじゃねーか、あのゴリラって、ちょっとお前に殺意を抱いたアル」


「なんで殺意!?」


「うるっさいな。黙って聞けヨ。で、お前は憎たらしいくらい幸せそうな顔で指輪を眺めてたアル。そしたらそのとき…」


「そのとき…」


「カラスがな、持って行ったんだよな」


「…そうなんだよ…」


まさか、まさかの話である。


カラスに持っていかれたって、ちょ、お前、てな話である。


しかし実際に起きてしまったこの悲惨な事件。


神楽も、さすがにちょっと同情する。


「まあまあ、あの時のことは忘れろヨ。ほら、パセリやるから」


「いや、今チャイナさんによって記憶ほじくりかえされたんだけどね。ってかパセリ?」


まあいいや、と渋々少女の手からパセリを受け取って口に放り込み、近藤は天井を見上げた。


神楽はステーキの最後の一切れを口に入れ、近藤と同じように天井を見上げる。


しばらく二人で天井を見つめながらもぐもぐした後、同時に視線を戻した。


「…ゴリぃ」


「…なんだい、チャイナさん」


「私にもなんかプレゼント」


言われて、近藤は渋い顔で神楽の周りの皿を見る。


これだけで一体いくらになるか。


考えるだけでも恐ろしいのに、この上さらにプレゼントまで要求するとは神楽もなかなかずうずうしい奴である。


が、しかし。


近藤はふうっと息を吐くと、疲れたように笑ってみせて


「…まあ、誕生日だもんなあ」


ぱっと顔を輝かせる神楽に、ちょっと癒される。


やっぱり子供だな、なんて。


「そのかわり、指輪のことは誰にも言っちゃあだめだぞ」


ずいと身を乗り出してくぎを刺せば、神楽は何度も頷いて立ち上がった。


「そうときまれば、じゅえりーしょっぷにレッツゴーアル!!」


「ジュ、ジュエリー!?ちょ、チャイナさん!それは無理だよ無理!!」


しかし近藤の声は、少女には届いていなかった。


いつの間にか、少女は外でぶんぶん手を振っている。


(…ありえねえ)


近藤はぺしっと額を叩いて、肩を落とした。


(ほんっと、やんなっちゃうなぁ…)


もう一度、横目でガラス越しに少女を見やる。


まるで太陽のような…いや、近藤にとっては悪魔のような、その笑顔。


でもやっぱり。


(笑顔ってなあ、いいもんだ)


癒されちゃったりして。








「ゴリ、あのネックレス買って!」


「ひゃ、ひゃくごじゅーまん!?」


「違うよ、ゴリ。せんごひゃくまんアル」


「無理無理無理無理!!ってかなんでこんな高いもん置いてんの!店長、店長を呼べぇぇぇ!!」







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読み返すのも恐ろしい出来となってしまいました、神楽はぴば小説。

セリフ多いだろ(笑

神楽と近藤さんって、ちょ、むっちゃ喋るよ(汗

まとめきれませんでした、頭ん中で二人がマシンガントーク繰り広げてました。

もう、ほんと。

やばいよねえ…(死

えっと、11月3日。

今日の誕生花は、カモミール。

花言葉は、あなたを癒す。

ほかにあった花の花言葉がですね、なんか寂しい系のばっかりだったのでカモミールに。

今回の話の神楽。

なんか純粋に怖い子ですよね(汗

癒してねーよ、みたいな。

近藤さんむちゃくちゃ困ってますから。

でも楽しかったです。

でも二人、ちょっと喋りすぎです。

…文才欲しい(結局そこ



まあ、とにかく!

神楽、はっぴーばーすでー!

来年はもっとマシなの書けるといいなあ…(遠い目

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