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□鬱々白息
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「もう冬ですか」


「遅いよ、沖田君。もうクリスマス間近じゃん」


「クリスマスなんて興味ありやせん。日本は盆と正月だけやっときゃあいいんですよ」


「あ、それ俺も同感。なんか最近はみんなチャラチャラしててな、腹立つわ。プレゼント?金無ぇっつの」


「ですよね。つかサンタなんかいねぇし」


「あー、サンタはいるよ」


「あれ、旦那サンタ信じてるんですか?意外だなぁ。なんかそのへんは冷めた感じかと思ってやした」


「マジでいるんだってば。俺手伝ったもん、サンタのプレゼント配り。まあアイツ、けん玉しか持ってきてなかったけど」


「それサンタじゃないですよ。ただのけん玉配るおっさんですよ。ちゃんと赤い服着てました?そいつ」


「ああ、そういやあなんか黒い服着てたわ」


「やっぱり。でもけん玉配るおっさんですか。いいおっさんですね。子供思いの」


「そうでもねえよ。なんか高い物頼んでる奴は飛ばしてたもん」


「…え、なんで子供が頼んでる物分かってるんですか、そのおっさん」


「なんかリストみてえなの持ってた」


「…もしかしてアレですかね、ロリコンストーカー」


「ん?何?ポリゴン?」


「ロリコンです。ぜってーそうですよ。ちっちゃい子の欲しい物チェックして、プレゼント渡して油断したところを…こう、がっ!と」


「マジでか。やばくね?俺普通にそいつ見送ったよ。なんか変なトナカイも一緒に」


「トナカイ?」


「うん、ベンって名前の気色悪ィトナカイ…っつーかおっさん」


「変質者ですね」


「まあ、そんな感じ」


「いけねえなあ、やっぱ最近乱れてますね」


「警察は何してんのかな、ん?悪を野放しにしてていいのかな?」


「はは、手厳しいですね」


ふわっと立ち上る白い霞。


見上げる彼の目に映るは、なんとも言い難い冷たい感情。




鬱々白息




団子屋の店表の長椅子に並んで腰かけて、銀時と沖田は息を吐いた。


ふわりと立ち上る白い霞が、今日の寒さを物語っている。


吹き抜ける風は身を切るように冷たく、鼻先やら耳やらが痛くてたまらない。


はぁ…と掌に息を吐きかけて両手を擦り合わせながら、沖田はぽつりと呟いた。


「旦那、知ってますか?息が白く見えるのは、空気が汚れてるかららしいです」


「へぇ」


「天人が来て、江戸はこの通り発展しやした。娯楽は増えたし、生活も何かと便利になったし。天人がもたらすモンは、なんでもかんでも珍しくてね。市民がそれに食い付いたって、文句は言えねえ。天人を悪く思わなくったって、責めることはできねえ。第一俺は幕府に仕える身なんで、天人に対してどうのこうの言える立場じゃねえ。仕方ねえんです、それは」


沖田は一息ついて、再び口を開いた。


「でもやっぱり、無償の功なんてなァ無いもんでさァ。江戸の発展と引き換えに、犠牲になったものもあるということを忘れちゃいけねえや」


そこでちらりと銀時の顔を見やる。


銀時は膝に両肘をついて、口元を手で覆ったままぼんやりと前を見つめている。


寒さのせいで赤くなった頬や指先が痛々しい。


そんなことを考える沖田の頬や指先だって、銀時に負けず劣らず真っ赤なのだが。


「市民は気にもかけちゃあいないでしょうが、事実、こうして空気は汚れましたし」


「攘夷戦争なんてのも起きたし、そのせいで数えきれないくらいの人間が死んだしな」


「…へぃ」


銀時が目線だけ上げて空を見上げる。


つられて沖田も空を仰ぐ。


銀色に輝く舟が、空を横切る。


立ち並ぶ、近代的な建物。


一際高くそびえる、ターミナル。


「実際さぁ、まあ俺達は負けたわけだけど。それは仕方ないっちゃあ仕方ないんだよね」


いつもの声音で、淡々と語る。


「宇宙は広いんだから。そらァ負けるさ。地球なんて、宇宙に比べりゃあちっちゃいもんだよ。その中でいくら俺達があがこうと、なんにも変わりゃあしねえ」


はぅ…と息を吐いて銀時はぎこちない動きで頬を掻いた。


「ったく、寒ィなこの野郎」


「どっかあったけェとこ行きやすか?」


「んー、ここでいいや。おいババア、団子追加。あとサービスで茶ァつけてくれや」


「サービスだぁ?馬鹿なことぬかしてんじゃないよ!その前に今までのツケ払いな!」


「あれ、ババアなんか今日綺麗だな。あれかな、髪切った?」


「おだてても無駄だよ」


そう吐き捨てて店奥に引っ込んだ老婆の後姿を睨みつけて、小さく舌を打ち鳴らすと


「沖田君、君はああいう大人になっちゃだめだよ」


「分かりやした。旦那みてえな大人には絶対なりやせん」


さらっと言ってのけて、沖田はにやりと笑ってみせた。


「まあ、見習いたいところもあるんですよ」


「どこだよ」


「いざというときにはきらめくところとか」


「棒読みなんですけど」


「元からこんな感じですよ、俺ァ」


「んー、たしかにそうかも」


「はい、お待ちどうさん」


老婆が団子を運んで来た。


盆に乗った、4本の団子。


それと。


「あれ、茶あんじゃん」


拍子ぬけして銀時が声を上げると、老婆は渋い顔で盆を置いて


「この寒い中、客に茶も出さないような店とは思われたくないんでね。それ食べたらさっさと帰りなよ、邪魔だから。ったく、店先でぼそぼそと。お客が入って来ないじゃないか」


「うるせークソババア」


「んまあ、茶の礼も言えないのかい、この男は。どうりでモテないはずだわね」


「モテないとか言うな気色悪ィ」


憎まれ口を叩いて団子を頬張る銀時を呆れたような目で見つめて、老婆は沖田に目を向けた。


「あんたも色々大変ねぇ。こんな男の面倒なんか見なくていいんだよ」


「へィ。お茶ありがとうごぜェます」


「いいのよ、あったまってね」


にこりと笑みを浮かべてから、老婆は店奥に引っ込んだ。


銀時は渋い顔で茶をすする。


「ったく、女はいい男には甘いんだよな。世の中不公平だぜ」


「旦那もいい男じゃねえですかィ」


「そう言ってくれるのは沖田君だけだよ。…あ、お前んとこのゴリラにも言われたことあったっけ」


「野郎にモテる男なんですよ、旦那は」


「男にモテたって嬉しくねえよ」


あたたかい湯呑を両手で包みこんで、沖田と銀時は一息ついた。


ゆるりと流れる時間。


今も昔も変わらず、時は流れる。


速くなったり、遅くなったりすることはない。


「まあ、アレだよ。結局さ、世間や境遇が変わったって、変わらないモンもあるわけじゃん」


「へィ」


「そういうのを、大事にしたいよね。しがらみにとらわれずさ」


時代の波に上手く乗ることも大切だ。


しかし、今も昔も変わらない、流されない、揺らがない、真っ直ぐに、自分を律してくれる何かも必要だということを忘れてはいけない。


仲間であり、信念であり、それは十人十色であるが。


「その点ではさ、俺は昔の仲間を尊敬するね。国を護るの信念の元、戦って、死んでった奴等だよ。とんだ酔狂野郎だけどよ、なんかそういう真っ直ぐなとこは見習うべきだよ、みんなさ。でも、無茶はしなくていい。行き過ぎた酔狂は身を滅ぼすだけだよ。得る物なんて何も無い。失う物の方が多いから」


銀時の瞳が、ゆらりと揺れる。


そこに宿る不安定な光に、なんだか胸がざわついて。


「俺も、そう思いやす」


「…いい大人になるよ、沖田君は」


茶化すようなその口調に似つかわしくない、穏やかな瞳。


沖田はふいっとそっぽを向いた。


その頬を銀時が串でつっつく。


「オラ、照れんじゃねーよ」


「照れてないです」


「照れてんじゃん」


「照れてないですってば」





吐いた息が、白かった。


でも、胸はほっこりあたたかかった。


今も昔も変わらない。


こういう時間を護るために、自分は戦おうと思った。












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銀さんと沖田は、なんかこんな感じでほのぼのと語り合ってるといいなあ。

沖田はもちろんサボってます(笑

なんか最終的に、書きたかったことを見失ってしまって、グダグダした感じになっちゃったんですけど…。

寒さのせいで頭が働きません。

もうとにかく寒いっ!!

そのうち、ちょいちょい直すかもしれないです。

あんまりにもグダグダしすぎてるので(汗

でもこれはこれで、銀さんと沖田っぽくていいかも。

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