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□思い出した、感情
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「うぅー、さぶっ!さぶさぶさぶ!」
「銀ちゃーん、家にはさぶなんていないアル」
「ちげーよ、バカ」
「何が違うアルカ。実はさぶさんいるアルカ」
「いねーってば。あーもーマジめんどくせーな、お前って」
半纏を着てぶくぶくに着膨れした銀時は、小さく舌打ちして目の前の神楽を押しのけた。
朝。
近頃めっきり寒くなって、ただでさえ寝起きの悪い銀時の機嫌は地の底、いやもう宇宙空間に飛び出しちゃったみたいな勢い。
とにかく、もう不機嫌極まりない。
ぶーぶー文句を言う神楽にうんざりしつつ、朝のホットいちご牛乳をたしなみながら。
頭で必死に呼びかける。
(新八ー、早く来やがれコノヤロー)
このうるさいじゃじゃ馬を大人しくさせることに関しては右に出るものがいない、新八。
普段は地味だの眼鏡だのと悪口ばかり言っているけれど、実は結構頼りにしていたりする。
「銀ちゃん、さぶさんはどこアルカ!もしかして、実は万事屋の地下には地下室があって」
「ここの下はババアの店だっつの」
「あ、そっか。じゃあババアの店の下に」
「ねえよ!もうお前うるっさい!お願いだから黙っててくんない!?俺朝は超機嫌悪ィの。ピリピリしてんの!あ、今のピリピリは違うよ、辛いのピリピリじゃないからね!」
「それぐらい分かってるヨ、バカにすんじゃねークソが」
そのとき、カラカラカラッという引き戸を引く音。
途端に神楽の目がぱっと輝く。
「新八!」
「あ、おはよう神楽ちゃん。銀さんも、おはようございます」
「新八、知ってるアルカ!?実はババアの店の下にはだだっ広い地下室があるんだヨ!しかもそこに、銀ちゃんがさぶさんを幽閉してるアル!」
「さ、さぶさん?」
「おい新八、そいつの言うこと信じるなよ。ただの妄想だから、そいつの」
「はぁ…」
「妄想じゃないネ!信じてヨ!じゃないと眼鏡粉砕するぞ」
「最終的には脅迫!?怖っ、神楽ちゃん怖っ!!」
いつにも増して騒がしい朝。
何気ない一言から始まる騒動。
いい加減めんどくさい。
「新八、いちご牛乳きれたんだけど」
「あ、買ってきましたよ。前注いだ時、あと半分くらいしかありませんでしたから」
「マジでか。さすが新八、気がきくねえ。お前いい夫になるよ、ほんと」
「へへへ、そうですかね?」
「まあ、夫になるためには結婚しなきゃなんねえから、お前には無理かもしんねーけど」
「…それどういう意味ですか」
「そのまんまの意味ですけどぉ?それが何か?」
「分かりました。もういいです。いちご牛乳は僕と神楽ちゃんで飲もうか。ね、神楽ちゃん」
「えー、私お茶の方がいいアル。いちご牛乳飲んだら銀ちゃんみたいに髪が白くなるもん」
「ならねーよ!…おい新八何声殺して笑ってんだコラ。このキモオタ眼鏡が。ぶっ殺すぞ」
「き、キモオタ眼鏡ぇ!?オタクと眼鏡は否定できませんけど、キモ!?」
「実際美形じゃねーだろーが、あんコラ」
「あんただって美形じゃねーだろ!死んだ魚みたいな目ぇしやがって!」
「銀ちゃんも新八も中の下アル。私は可愛いけど」
「性格は可愛くねーけどな」
「なんだとぉぉぉ!?」
だけどきっと
この騒々しさが無くなったら
すごくすごく寂しいんだろう
「ちょっとあんたたち!二階でどったんばったん、いい加減にしておくれよ!近所迷惑なんだよ!」
「あ、お登勢さん…す、すいません」
「ババア、ババアの店の地下にはさぶさんがいるんだヨ」
「さぶさん?」
「いねーって言ってんだろーが!」
「…なんだかよく分かんないけど、とにかくもう静かにしておくれよ。今度騒いだらあんたら全員ここから叩き出すからね」
「うぃー」
ったく、俺もヤキが回ったもんだ
寂しい、なんて感情
忘れちまったと思ってたんだけど
「あ、銀さん、たしか今日仕事ありましたよね」
「あ、そーだった。やべ、もう時間ねーじゃん!朝飯食ってねーんだけど、俺!」
「もう、何してんですかほんとに。じゃあ僕ご飯用意しますから、さっさと着替えてきてください」
「新八、私のご飯も!」
「はいはい」
うるさいばかりで
腹が立つことの方が多いけど
やっぱり、こいつらがそばにいた方が
楽しいっつーか、なんつーか
色々、アレだよな
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万事屋ほのぼの、というリクエストでしたが…。
暴走しました(汗
万事屋三人衆も、私も。
セリフばっかになっちゃいましたね…。
しかもラスト、誤魔化してます。
でも銀さんらしいかな、なんて思ったり思わなかったり(どっちだよ
照れ屋さんですから、銀さんは。
書き直し承りますので、お気に召さなければお気軽に言ってください。
ではでは咲羅様、このたびは相互ありがとうございます!
これからよろしくお願いします。