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□家族も同然
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「新八ぃー、定春の散歩行ってくるアル!」


神楽ちゃんが玄関で叫んでいる。


そういえば銀さんにおつかい頼まれてんだった、と思い出して、僕は玄関に走った。


「待って、神楽ちゃんッ!僕も行くよ」


いきなり姿を現した僕に、神楽ちゃんはぎょっとして目を見開く。


「何をそんなに急いでるアルカ」


「いや、おいてかれないようにさ」


「別に、おいてったりしないヨ」


ちょっと拗ねたように唇を尖らせる神楽ちゃんの服の袖を、定春が急かすようにくいっと引っ張った。


神楽ちゃんはちょっと待ってね、と定春の額を撫でると、僕に向き直る。


「銀ちゃんは?来ないアルか?」


「あぁ、銀さんは行かないと思うよ。僕、おつかい頼まれたし。たぶん今昼寝してる」


「ふん、家でだらだらばっかしてるからあんなモジャモジャの毛が生えてくるネ。もっと私のように外で遊ぶべきヨ」


「…あぁ、うん、そうだね…」


一応相槌を打っておくが、銀さんまで神楽ちゃんのように遊んでたら…商売なんてやってけないだろうな、と思う。


でも、銀さんも神楽ちゃんほどではないにしろ、結構外出てるけどなぁ。


パチンコしに行ったり、映画観に行ったり。


仕事しろよ、と思わないわけではないけれど、遊びをとったらきっと銀さんは仕事をする気力もなくなるだろう。


「ま、昼寝してるんならしょーがないネ。あんな天パほっといて、さっさと行くアル」


「はいはい」


昼寝してたって起こせばいいのにね。


なんだかんだで銀さんのこと、大事に思ってる神楽ちゃん。


戸を開けば、ひゅぅっ、と冷たい風が入ってきて思わず顔が引きつる。


「寒ッ!!神楽ちゃん、本当に散歩行くの?なんなら僕が、買い物ついでに…」


定春の散歩行ってあげようか、と言いかけて、僕は口をつぐんだ。


そういえば、僕に定春の散歩は無理なんだった。


あの巨大犬は、神楽ちゃんにしか操れない。


なんやかんやで、一番世話してんのは僕なんだけどなぁ…。


やっぱり、ご飯をくれる奴より遊んでくれる奴の方が好きらしい。


そのへんは、普通のやんちゃな仔犬と変わらない。


「ん?何アルか?」


「いや、ごめん。やっぱなんでもない」


ほんとは、神楽ちゃんには家でぬくぬくしててほしいんだけどな。


やっぱり神楽ちゃんは、妹みたいで可愛くて仕方がない。


そんなこと言ったら、鉄拳がとんでくるのは間違いないけど。


「おかしな奴アルな」

訝しげに眉をひそめて、神楽ちゃんは道へと続く階段をおりていく。


その後に、僕と定春が続く。


ってか定春、あんな巨体でよくこんな狭い階段普通におりれるな…。
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