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□何気ない日々
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ぱち、と。


まだ薄暗い部屋の中で、銀時は目を開いた。


部屋の寒さに思わずぶるりと身を震わせる。


布団をしっかりと体に巻きつけてちらりと時計を見やれば、現在4時30分。


(ありゃ、これまたずいぶん早起きしちまったな)


どうりで暗いはずだ、と思う。


いつも、目覚めるのは新八がやって来てから。


スパァン!と小気味好い音をたてて襖が開き、


「銀さん!」


と第一声。


それでも狸寝入りを決め込んでいると、新八は銀時の身体をゆさゆさと些か乱暴に揺する。


だが負けず嫌いの銀時。


そう簡単に起きてやるものかと、ひたすらに目を閉じて寝たふりを通す。


そのうち怒った新八がぐいぐいと髪の毛を引っ張っても知らんぷり。


「ぐぴーぐぴー」


なんてあからさまな寝息をたててみたり。


でもやりすぎると、新八が最終兵器の神楽を呼んでしまうのだ。


彼女によって訪れる朝は、そりゃあもう凄まじく。


殴るわ蹴るわ引っ張るわ踏みつけるわの大騒ぎ。


その時は、さすがに銀時も死を覚悟した。


神楽のあまりの暴れっぷりに仰天した新八が止めてくれなかったら、今頃銀時は星になっていたかもしれない。


そんな地獄絵のような朝を迎えてからは、銀時もあまりやりすぎないように気をつけている。


(新八が来るのは…まだまだだな)


ころんと仰向けになって、ほうっと一息。


新八はうんざりしているのかもしれないけど。


自分を起こすのが面倒臭いとか思ってるのかもしれないけど。


(寂しいねェ…)


自分はこんなに楽しみにしているのに。


彼が起こしにくるのを。


新八の第一声によって己の朝は始まり、新八と神楽と一緒に朝食を食べて、そしてのんびりと時間を過ごす。


独りぼっちで迎える朝なんて、今では考えられない。


想像してみると、なんだかものすごく虚しくなった。


(新八が来るまで、寝てよっかな)


ほんとはもうしっかりぱっちり目は覚めているのだが。


無理やりに目を閉じて、柄にも無く羊なんて数えてみる。





無限のループのように繰り返し繰り返し





いつもと同じ朝を





いつもと同じ幸せを






→新八
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