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□何気ない日々
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すっかり夢の中の銀時と神楽を起こさないよう、新八はこっそりと台所に立っていた。


たまにはおやつでも、と。


なんとなく思いついて台所に立ったものの。


(冷蔵庫空っぽ…)


どこのニートの家か。


まさに空っぽ、なのである。


これじゃあおやつは無理かな、と思いつつ、銀時と神楽の喜ぶ顔が見たくて新八は一人考えていた。


ここ最近仕事が無くて、銀時もすっかり甘味とはご無沙汰中。


そのせいかやけにイライライライラしている銀時をちょっとでもいいから落ち着かせたい、というのもある。


神楽はどこにそんなお金があるのか、ちょくちょく駄菓子屋に通っては大量の駄菓子を買い込んでくるが、ファミレスの前を通るとき、ショーウインドウ越しに見えるケーキのサンプルを物欲しげに見ていることを新八は知っている。


あんな、フルーツがたっぷりのったケーキなんて作れやしないが、ホットケーキくらいなら、なんて考えていたのに。


(どうしよう…)


今日はやめておこうか、と仕方なくおやつ作りは諦めて居間に戻る。


(また今度、三人で一緒に作ればいいか)


それはそれで楽しいだろうと思う。


三人で一緒におやつ作り。


でもきっと自分はほとんど食べられないだろうな、とほんの少ししょんぼり。


普段からよく食べる神楽は当然のこと、銀時は甘いものにだけは目がないのだから。


(二人に全部食べられちゃうよねぇ…)


別に自分は別段甘いもの好きなわけでもないから、かまわないのだけれど。


ちょっぴり寂しい。


銀時と神楽にお腹いっぱい食べてほしいと思うのだけれど。


やっぱりちょっぴり寂しい。


(だってさ)


仲間外れ、みたいで。


それにちょっと悔しい気持ちもある。


(だってさあ、絶対銀さんと神楽ちゃん、はなっから僕に分ける気ないもんね)


力では、あの二人には到底かなわない。


でも、諦めるしかないのだと、戦う意欲を投げ出してしまうのはどうかと思う。


もっと強くなりたいとも思う。


(そんで、いつか絶対一人で全部おやつたいらげてやるぞ)


でも結局は、銀時と神楽に全部食べられてしまうのだろう。


いくら力が強くったって…


(銀さんと神楽ちゃんの笑顔が、好きなんだもんなぁ)


彼らから、おやつを取り上げてしまうことなんてできない。


彼らを笑顔にしてくれるおやつを、一人占め、なんて。


(甘すぎだろ、僕…)





甘い甘い





砂糖漬けの飴玉のような





己の甘さにうんざりした








→神楽
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