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□何気ない日々
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「おやすみ」


新八の声とともに閉じられる引き戸。


途端に広がるのはひたすらに黒い闇。


一瞬押入れの狭さなんて忘れてしまうくらいどこまでも黒いそれは、故郷の寂れた町並みを頭に蘇らせる。


そこはじめじめしていて荒れ果てていて、日の光の届かぬ様は現世に現れた地獄のようで。


だが自分達夜兎にとっては、他のどこよりも住みやすい処だった。


…しかし。


今自分が暮らしているこの地球という星は、日の光が十分に降り注いでいることを差し引いてもとても素晴らしい星だ。


そして十分に潤った生活を知ってしまった今、あの故郷の星に帰りたいかと問われれば、すぐに頷くことはできないだろう。


いや、もう帰ることは無いのかもしれない。


地球を出たら、えいりあんばすたーのパピーと一緒に宇宙中を駆け回るつもりだ。





でも…。


銀ちゃんや新八とは離れたくない、なんて。


我儘だ。


しかし、一生三人一緒にいられるはずがないということは分かっている。


自分も新八も、いつかちゃんと自分の足で立たねばならない時が来る。


そしてまた万事屋で独りぼっちになった白髪の男の姿を思い浮かべると、なんだか泣けてきた。


事実、涙がちょっと零れた。


だがパジャマの袖で乱暴にぐしぐしと拭い、ぐっとこらえる。


覚悟はできているのだ。


いつ『その時』が来てもいいように、ちゃんと自分に言い聞かせてある。


夢は見ない。


三人でずっと一緒にいられるかもしれないなんて、甘い夢は。


もしかしたら、『その時』が来たら自分は泣いてしまうかもしれない。


いや、きっと泣くだろう。


だからそれまで、涙はとっておこう。


今はこの幸せな時間を、ただひたすらに楽しむのだ。


地球に未練の残らぬよう、おいしい物をいっぱい食べて


サドと決着をつけて


姉御に強い女になるための教えを乞うて


そよちゃんと遊んで


新八の優しさにうんと甘えて


銀ちゃんに大人の女と認めてもらって


そしていつか、布団を並べて三人で川の字になって寝よう。


いっぱいいっぱい話して、そのまま夜を明かすのもいい。


考えれば考えるほど楽しくなってきて、思わず頬が緩んだ。


今夜はいい夢を見れそうだ。


淡い期待を胸に、意識を手放した。








居所は遠く離れていようとも


容易には切れぬ糸がある


泣いて笑って「さよなら」と


手を振り別れるその時まで


そのたしかな糸を信じて


強くて太い絆を信じて








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朝、昼、夜と、ちょっと雰囲気を変えながら書いてみました。

やっぱり万事屋はお互い想い合ってます。

でもみんな素直じゃないので、はっきりと表には出さないでしょうね。

暗黙の了解みたいな。

はっきりと示さずとも、お互いの想いはちゃあんと分かっていると思います。
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