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あー、どうも、いらっしゃいませぇ。


お客さん、予約は?してない?


ああ、いやいや、全然大丈夫すよ。基本予約無しに押しかけて来るお客さんがほとんどなんで。


まあまあ、上がってくださいや。傘はそこに、ああ、はい、そこです。


新八ィ、茶用意してくれ。いちご牛乳も忘れんじゃねーぞ。


あ、お客さんはどちらにします?茶かいち…あ、お茶で、はい。















ああ、なんか新八…あ、うちのバイトなんですけどね、あいつなんか知んないけどいないんで、とりあえずいちご牛乳持ってきましたんで。


いやいや、そんな嫌そうな顔しなくていいでしょ。うまいっすよ、ここのいちご牛乳。


……ああ、お茶っ葉きらしてるんでお茶は無理ですわ。え、そんな嫌ですかいちご牛乳。


ためしに飲んでみてくださいよ。マジこの会社のやつはうまいっすよ。新八と神楽…あ、神楽もバイトなんすけど、あいつ等もうまいって言ってるんで。間違いはないかと、はい。


そういやああいつ等、買出し行かしてんでしたわ。


まああいつ等いなくても全然支障は無いんで、とりあえずお話聞かせていただけます?


そのうち帰ってくるだろうし。


途中で道草くってなきゃの話っすけどね。


っとにあいつ等ガキだから、道草大好きでね。この前なんか、トイレットペーパー買って来いって言ったら何時間たっても帰ってこなくてね、いつ俺の腹が機嫌損ねちまうか分かんねーから、探しに行ったんすよ。


そしたら、この近くに公園あるじゃないすか?あそこのベンチで二人仲良く舟漕いでましたからね。ほんっと馬鹿でしょ?


そりゃあ天気よかったし気持ちのいい日ではあったけど、ベンチで昼寝って、ねえ?俺が待ってるにも関わらずっすよ?


もういい年なんだから、昼寝してる暇があったらちゃきちゃき働いてくれってね、ほんとね。


…ああ、すいません、こんな話しても面白くないっすよね。


え、続けてくれって?面白いっすか、こんな話聞いて。


んー、なんか改めて言われると話しづれえな…。


まあ、なんだかんだでいい奴等ですね、あいつ等は。


仕事しねえし態度悪ィしくそ生意気だし、そのくせ給料だけは持って行くし。


ろくでもねえ奴等なんすけど、嫌いじゃねえな、あいつ等は。


意外に使えたりすっから。


ほら、今現在、買出し行かせてるし?


ガキはフットワークが軽くて羨ましいわ。


まあ俺もまだぴちぴちの20代だし、いざというときには軽やかに飛び回ったりするわけだけど、買出しとかはめんどいから嫌いっすね。


散歩が好きっていう奴の神経が分かんねーもん。


歩いて何が楽しいんすか?


毎日毎日おんなじ場所歩いて何がおもろいんすか?


日によって空の色が違うのさ、とか、毎日毎日繰り広げられている小さなドラマを目撃するのが好きなのさ、とか言ってるの聞いたことあるんすけどね、だから何?って思いません?


よっぽど毎日に楽しみが無いのか、はたまた風流な奴なのか、そこんとこは分かんねーすけど、まあ俺には理解できませんわ。


…それにしても暑いっすねえ。


扇風機ぶっ壊れてるから使えねーんすよ。


首無いんで。


神楽の介錯で首落ちたんで。


扇風機として生まれ、扇風機として生き、扇風機として死んでいきました、あいつは。


立派なもんすよ。


うちに来なきゃ、今頃まだ元気に働いてたんだろうけど…まあ、運が無かったってことでね。


かわいそうだけど。


っあー、そろそろ梅雨もあけて、本格的に夏到来っすよ。


昨日、今年初めて蝉が鳴いてるの聞いたんすけどね、なんか「ああ、夏が来たなあ」って感じますよ、あの声聞くと。


暑い時ゃ、みんみんみんみん騒がしいなぶっ殺すぞとか思ったりしますけど、まだそこまで暑くなくて、心に余裕があると、蝉の声もなかなかいいもんすね。


俺は暑いのは嫌いだけど、夏はまあまあ好きかな。


お客さんは?ああ、そう。


まあね、暑いの嫌いっつったらもうその時点で夏はダメじゃないすか。


暑くなかったら夏じゃねーし、暑いからこそ夏なんだし。


でもなんか、夏は嫌いになれないっつーか。


俺、祭りでわたあめ買うのが好きなんすよ。


でも夜店のわたあめ高くないっすか?


スーパーとかで買った方が断然安いっすよね?


でもやっぱ買っちゃうね、あれは。


気分が高揚してるから、値段なんかたいして気になんないのかな。


まあ、祭りなんだから、値段気にして我慢したりとかしたくねーし。


うわあって盛り上がりてーし。


まあ、後になって後悔したりするんすけど。


祭りといやァ、去年の夏祭りは大変だったな。


ブラックホールストマックを持つうちの神楽が、その食欲魔人っぷりを存分に発揮しやがりまして。


あれが食いたいこれが食いたいあれ買って帰ろうあれも美味しそう買ってよ銀ちゃん!


…さすがに値段気にしますよ。


だから、万事屋の掟として『祭りで買うのは二つまで』っていうの作ったんすけど、それがもうブーイングの嵐で。


ってかね、神楽と新八両方に俺買ってやらなきゃいけないわけだから、一人に二つ買うっつったら四つも買わなきゃいけなくなるわけっすよ?


それだけでも結構苦しいのに、もっと買ってくれとか我儘以外の何物でもないでしょ?


だから、もっと欲しいもんがあるなら自分の金で買えって言ったらじゃあ給料よこせとかぬかしやがるし。


仕事無ェからやりたくてもやれねえんだっつの。


で、結局新八が「僕は一つでいいですから、神楽ちゃんに三つ買ってあげてください」って言ってくれて、神楽の機嫌も直ったんだけど。


新八は人が好すぎらァな。


新八にはたこ焼き買ってやったんだけど、半分以上神楽にとられてやんの。


一応怒るけど、それでも最終的にはしょうがないなって感じに笑うんすよ。


なんかいじらしいというかね、なんかこう、頭くしゃくしゃってしたくなるというかね。


いい奴だわ、地味だけど。


あれで性格悪かったら、何一つとりえのない、正真の駄眼鏡だものな。


あ、あいつにはツッコミがあるか。


でも性格悪かったら武器とか使い始める恐れがあるな。


たとえば?たとえば……ハリセン?


あれ武器でしょ、立派な。


いくら素材が紙でも、あんだけでかけりゃ相当重みあるでしょ。


あれで容赦無しにすぱーんってぶん殴られたら普通に痛くね?


俺体験したことねーから分かんねーけどさ。


















あ、いちご牛乳温くなるんで飲んじゃってください。


はい、かんぱーい。


そういやあ、新八と神楽にいちご牛乳頼むの忘れたわ。


気ぃ利かせて買って来てくんねーかな。


へ?いやいや、もちろんいちご牛乳以外のもんも飲みますよ、俺。


たとえば?えーっと、たとえば。


コーヒー牛乳…とか?


ああ、分かる、フルーツ牛乳も美味いっすよね。


メロンミルク?いやいやそれは無いっすね、メロンなんかリッチなもん、うちじゃそうそう買えないんで。


値段変わんねーの?いちご牛乳と?


マジでか、やべ、ちょっと気になる。


今度買ってみますわ。


は?ライチミルクもあるんすか?なんか味が想像できないんすけど…お客さん飲んだことあるの?無い?


…ってかお客さん、ちょっとちょっと。


俺、乳飲料以外も飲みますからね、普通に。


あれ、なんでそんな驚いたような顔してんの?


当然でしょ、茶とか普通に飲むし、果汁100%のジュースとかも結構好きだし。


さすがに水分補給が乳飲料ばっかだったらきついっすよ。


全然喉潤った感じしねーし、乳飲料って。


やけに甘ったるいしね、まあそこがいいんだけど。













あ、そういやあお客さん、依頼があってうち来てるんですよね?


お話聞きますよ。


無駄話ばっかしててもあれなんで。


もう俺の話も聞き飽きたでしょ?


え?ガキどもが帰ってきてからでいいんすか?


そうっすねー…あいつ等がうち出てからそろそろ30分か。


もうじき帰ってくると思うんで、じゃああいつ等帰ってきてからお話聞きますわ、はい。


……雨止まねえなあ。


タオル用意しといた方がいいかな。


結構今日風強いし、あいつ等濡れてるかもしんねーから。


お客さんも帰り大変っすね。


お客さんが来た時よりも雨足強くなってるみてーだし。


なんなら新八か神楽に送らせましょうか。


大丈夫?はあ、そうすか。


まあ、天気予報だと夕方までには止むらしいし、それまでうちで雨宿りしてくれて全然構わないんで。


多少うるさいっすけどね、ガキ共が騒ぐから。


それでもよけりゃ。











…あ、今ピンポン鳴りましたよね?


ガキども帰ってきた。


うわ、なんかびちゃびちゃ聞こえるし、つめてーとか言ってるし。


……しゃーねーなぁ。


ほんじゃお客さん、ちょいと失礼しますね。


あいつ等がずぶ濡れのまま入って来て、お客さんの着物とか濡れたら大変ですし。


すぐ戻るんで、はい。








おーいお前等ァ、タオル持って行ってやっからそこ動くんじゃねーぞ!









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新八と神楽のことちゃんと考えてる銀さんが書きたかったんだよ、というアレです。

最近ほんっと万事屋書いてなくて、ほのぼの万事屋書きたかったんです。

万事屋というか、銀さんとお客さんの会話メインなんですけどね。

ちらほら、子供達に対するこそばゆい感じの思いが漏れてますよ銀さん。

自分では気付いてない。

自覚無しの親馬鹿さんなイメージです、銀さんは。



三万打御礼ということで、ちょっといつもとは違う感じで書いてみました。

終わり方がきれいじゃないのが心残りです。

でも、「タオル持って行ってやっから」っていうのが書きたかったんです。

なになに「してやる」からっていうのがすごい好き。

愛情を感じます。

でもほんっと中途半端に終わった感がありありなんですよね…ううむ、力不足。



ではでは最後になりましたが。

皆さんの拍手やコメント無しでは、ここまでサイトを続けることはできなかったと思います。

ひたすら皆さんに感謝です、ありがとうございます!

これからもマイペースではありますが運営頑張っていきますので、お暇なときにでも覗いてやってくださると嬉しいです^^



(2009.7.10 緋名子)

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