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□azure
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「まあ、なんていうか。簡潔に言えば、今朝妖魔を呼び出したら―――」


「ちょ、ス、ストップゥゥゥゥ!!!!」


新八の突然のシャウトに、沖田は少し目を見張って「なんでィ」と心外そうな声を上げた。「俺なんか変なこと言ったかィ?」


「へ、変なことっていうか、おかしいでしょ!妖魔を呼びだしたって…そんなこと…!」


言葉が続かなくて、新八は口をぱくぱくさせるばかりだが、彼が言わんとしていることを、その場にいる一人の人間をのぞいて全員が理解できた。妖魔を呼びだすなんて人の道を外れている。そんなことを、今朝顔を洗って、とでも言うようにさらっとごく当たり前のように言ってのけられて、納得できるわけがない。


しかし沖田だけは、何故話の腰を折られたのか分からない、というようにきょとんとしている。優乃介は苦笑いだ。


「沖田さん、妖魔を呼びだすなんて普通じゃないですよ。一体何があったんですか?」


「それとも俺達をからかってんのか?ん?残念だけどな、そんな子供だまし、新八や神楽は騙せても俺は騙せないぜ。あんまり大人をなめるなよ」


新八と銀時に言われて、沖田は小さく肩をすくめた。


「冗談でもからかってるわけでもありやせん。俺は真面目に話してるんですよ、旦那」


銀時に向かってそう言ってから、沖田は新八に視線を移して続けた。


「まあなんていうか、妖魔を呼びだしたっつっても、俺は別に日本中を恐怖のどん底に突き落としてやろうとか、そういう大それたことを考えたわけじゃなく―――」


「妖魔を呼びだしたっていう事実がすでにかなり大それたことだと思うんですけど…」


「うるせえ黙って聞きやがれ。で、俺が妖魔を呼びだしたわけは、土方さんを亡き者にしてやろうと―――」


「やっぱりっすか!いやなんとなくそうじゃないかなあとは思ってましたけど!」


「沖田君ナイス」


「おめーは親指立ててんじゃねえ!折りますよ!」


新八の本気の脅しに、銀時はそそくさと親指を引っ込める。沖田はナイスと言われて満足気だが、神楽はふくれっつらだ。


「新八お前さっきから話の邪魔ばっかするんじゃねーヨ。むかつくアル。それとお前も褒められてへらへらしてんじゃねーヨ」


「へいへいサーセンねェ」


少しもすまないと思っていないような口調で言ってから、しかしへらへら笑いは引っ込めて、沖田は続けた。


「えっと、どこまで話したっけな。あ、土方さんを亡き者に…のところですかね。まあそういうことでさァ。俺は今朝、土方さんを亡き者にしようと、妖魔を呼び出したわけです」


「でもなんで土方さんを…?」


神楽に文句を言われたこともあって、控え目に口をはさんだ新八に向かって、沖田は思いっきり渋い顔をしてみせた。


「そんなんいまさら言わなくても分かんだろィ。俺が常に土方さんの命を狙ってるってこと、お前も知ってるだろーが」


「はぁ、それはまあ、知ってますけど…でも、なんで今朝なのかな、と。行動を起こしたのが」


沖田の腕があれば、土方を刀で…ということもまあ簡単では無いにしろ、可能なはずだ。だから土方もあれだけ沖田を警戒しているわけで。しかし沖田は己の腕に頼らず、妖魔を呼びだして土方を手にかけようとした。土方は幽霊の類が苦手だから、当然ダメージは大きい。相手が人間なら防衛手段もあるが、得体のしれない妖魔となるとそうはいかないのだから、土方は相当の恐怖を味わうことになるだろう。沖田が本当に土方の命をとろうと思って妖魔を呼び出したのかは分からないが、とにかく土方に大ダメージを与えるという目的を、妖魔ならば容易に果たすことができる。つまり、沖田は世界ではなく土方を恐怖のどん底に突き落としてやろうと…命をとるとらないはこの際別として…妖魔を呼び出したわけで、彼が土方をそこまで恨むことになるような出来事が、今朝起きたはずなのだ。


「別に、そんな大した理由じゃねえよ」


沖田は、つまらなそうな顔で言った。


「ただ、夏って言ったら怪談だろィ?だからまあ、季節的にぴったりかなあと」


「そ、そんな理由で!?」


長々とした考察は無駄だったようだ。新八は驚き、拍子抜けし、そして大いに呆れた。


「ゆうちゃんもいい迷惑アル!」


「あ、いえ、別に私は…」


ぶんぶんと手を振る優乃介を見て、新八の頭に新たな疑問が浮かんだ。それを素直に口に出す。


「でも、沖田さんの目的はあくまで土方さんを…亡き者?にする?ことですよね?それを、こんな…その、いい人を絵に描いたような優乃介さんに…」


「いやいやいや。これはちょっとした手違いでねィ」


新八の話を遮ってそう言うと、沖田は優乃介の顔をじっと見つめて、「これはゆうちゃんに話してもらった方がいいかねィ」と問いかけるような口調で言った。優乃介は沖田の言葉にはい、と頷くと、こほんっと咳払いをして、真面目な顔で一同を見回した。
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