(Love)
□手を繋いで
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「十五夜?」
神楽がいるのはいつもの公園。今日は爽やかな秋風の吹く気持ちの良い晴天。その青に映える赤い蜻蛉を遊び仲間のよっちゃん達と追い掛けているところだった。
「そう。今日は十五夜って言って一年で1番月が綺麗に見れる日なんだぜ」
そう言いながらよっちゃんは捕まえた蜻蛉を籠の中に入れる。捕まえてどうするつもりなのか、神楽は何とも無しにそれを見ながらふうんと答えた。
「ホント地球人はそういうお祭り好きアルナ。」
素っ気ない神楽の返事に必死で興味を持たせるベく、十五夜について力説する他の坊主頭。
「十五夜の日には『お月見団子』って団子を作って飾るんだ!!」
「お団子!!」
“お団子”その一言でやる気の無かった神楽の目はキラキラと輝き、それに気が付いた少年達はニヤリと笑った。
「そう!!だから俺達今夜、その飾ってある団子を盗りに行こうって話してんだ。だからお前も……」
あれ……?
さっきまで少年達が囲んでいたチャイナ娘はいつの間にか目の前からいなくなっていた。
「よっちゃん教えてくれてありがとうアル!!じゃあナー!!」
元気な挨拶とともにもの凄いスピードで遠ざかっていく紫色の番傘。
爽やかな風の吹いていた公園に季節外れの寒い風が吹いた気がした少年達であった。
* * * * *
ダダダダダダダダ
ズバンッ!!!
「新八ィ−−!!!!」
勢いよく万事屋のドアを開ける神楽。
「あ、お帰り神楽ちゃん。」
こんな事は日常茶飯事だとでもいうように普通に挨拶する新八。
その手にあるのは−−
「お団子ネ!!!」
「うん。ほら今日、十五夜でしょ?だから家で作ってきたんだ。みんなで僕ん家でお月見しようと思って。」
一つ食べる?と優しく聞いてくる新八がいつもの駄眼鏡ではなく、普通の眼鏡に見えた。
「なんだその微妙な違い!!嬉しくないわ!!」
「おー神楽帰ってきたかー。」
いつの間に立っていたのかその後ろには銀時がいた。
「なんかよォ、ぱっつぁんがお月見、お月見って五月蝿くてよ。」
と一つ欠伸を漏らし、
「しょーがねぇからお前待ってたんだわ。」
「まじでか!!ありがとうアル!!」
キャッホー!!と全身を使って喜びを表現する神楽。それに呼応してか定春も一緒に騒ぎ立てていた。
「ああー!!もう、うるせぇぞ!!おら、さっさと行くから準備しやがれ。」
「もう出来てるアル!!」
「早ァ!!」
先程まであんなに騒いでいた神楽は定春にリードをつけ、外出用に貰ったポーチを肩からかけていた。
「ほら早く行くアル!!」
「お前のそれは瞬間移動か!!」
「つーか定春も連れていく訳?」
「当たり前ヨ!定春だって一緒にお団子食べたいに決まってるネ。」
「ワン!」
「まあお団子はいっぱいありますから大丈夫ですよ。今日は姉上もお休みが取れたらしくて。久しぶりに皆でのんびりできますよ。」
お花見以来ですかね。皆で集まってこういう事するの。
そういえばそうだっけ。あの時は真撰組のあいつらと馬鹿騒ぎした。なんだかんだで真撰組の奴らとは腐れ縁だ。
「まああいつらとは今日は会わないだろ。」
ゴリラはわかんねぇけど。とけだるそうに尻をかく銀時。
まああのゴリ……真撰組の局長である近藤は新八の姉、お妙のストーカーだからしょうがないといえばしょうがないが。
「あんな奴どうでもいいネ。ゴリラの事なんか考えてたらお前もゴリラになるぞ駄眼鏡。」
「何サラっと近藤さんにも僕にも酷い事言ってるの神楽ちゃん!!?」
全くもう……神楽ちゃんのツッコミにかかったら油断も隙もない。(というかツッコミなのか、アレ。)
「新八ごときがモノローグ使ってんじゃねぇヨ。」
「ええ!!?今、神楽ちゃん僕の心読んだ!?モノローグ読んだよね!?」
「細かいことは気にするなヨ。そういう事ちまちま気にしてるから身長も伸びないのヨ?」
「余計なお世話だァァ!!!」
どたばたと騒がしく玄関へ向かうとそこにはもう銀時が待っていた。
「おせーよコノヤロー。なんですか二人でトイレの取り合いでもしてたのか?」
違がいますよこの駄目天パ!!
すかさずツッコむ新八。
な、テメェ天然パーマなめんじゃねぇぞコラ!お前、自分がちょっと髪の毛サラサラしてるからってそーゆー事言ってると将来ハゲればいいのになー。
願望!!?
そんな他愛ない会話も、こうやって過ぎていく毎日も、みんなこの二人がいるからで。
ふと窓の外を見ると赤く色付いた紅葉が風に揺られていて、
前を見れば銀ちゃんと新八がいて、横を見ると定春がいる。私の大切な人達が私の周りにいる。
そんな事が私にはとても愛しく思えて、愛しい万事屋の二人の元へ駆け出した。
(新八!!途中で酢昆布買うヨロシ!)
(新八ィ〜俺にはイチゴパフェ〜)
(あーもー何なんですかあんたら!!)
(仲間、デショ?)
(赤く色付いた紅葉が笑った、気がした。)