□花霞
2ページ/6ページ

「入りますよ〜〜〜、閣下」
言葉よりも行動の早いヨザックは、返事を聞かぬまま上司のいる部屋へと入る



彼の上司 、フォン ヴォルテール郷グウェンダルはいつもと同じように眉間に皺をよせたまった書類に目を通している

「用件はなんなんで……?!また潜入捜査ですか??」

「いや、お前には今回から護衛の方に付いてもらうことになった……。それで、今後の話し合いのため眞王廟まで猊下を呼びに行ってもらいたいのだが……」

「坊ちゃんの方は大丈夫なんすか??」

「あぁ、朝からギュンターが連れて行ったからな……!!当分は戻ってこないだろう。」
魔王と王佐のいつもと変わらぬ風景を思い出し、不思議と口元が緩む上司に対してヨザックが少し戸惑ったように尋ねる

「なんで俺なんです??」
予想もしなかった彼の質問に眉間の皺がさらに寄る……
「不満か!?」
思わず口からでてしまった浅はかな質問に後悔してその場を取り繕うと必死で弁解する
「いえ、呼びに行くぐらいなら俺じゃなくても他にも兵はたくさんいますし、なんで俺なのかなぁと思いまして。」
彼の上司は、やれやれといった風に肩をすくめ応える

「お前と猊下は先の件で行動を共にしていたと聞く。猊下はこちらに来られて、まだ日が浅いので面識のあるお前が適任だと私が判断したからだ!!…………それに………」

「それに!?」
少し間をおいて話を続ける


「国内と言っても、この前のようなことがある。いつまた奇襲があるとも分からんからな!!そうなれば、少しは腕の立つ者がいいだろう」


おそらくコンラッドのことだろう。陛下達と一緒だったからと言っても、あいつはあんな簡単に死んじまうような男じゃねぇ!!あいつは必ず生きている。
今は………俺に出来ることをやるしかねぇんだ

「グリエッ、頼んだぞ!!」

「閣下にそこまで買われちゃぁ、しょうがないでしょ。ではまた後ほど……」
いつもより強い声色で放たれた上司の言葉に………この国を、陛下達を必ず守る決意が固まる


そのままドアノブに手をかけ、神経質な上司のために最小限 音をたてないよう扉を閉める

ドアが閉まるのを確認し、任務を果たすため眞王廟へ向かおうと振り返った


…………が次の瞬間、彼の目に飛び込んできた色にヨザックは恐怖心が湧き上がった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ