Tyki×Allen
□木を隠すなら森の中
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※バレンタイン小説です。(2010/2/14にupしましたが誤って消去してしまったので再構成)
※保険医ティキ×高校生アレン
※アレンが似非紳士
※結果、誰なのか分からなくなった。
上記の事柄に注意してOKの方のみお読み下さい。
白で統一された部屋に橙色の光が射し込み壁をオレンジ色に染め上げる。
この部屋の持ち主であるティキが、さてそろそろ帰ろうか、と煙草片手にぼんやり思案していると、
バサバサッ!
目の前を何かが落下した。
視線だけを下に移すと、机の上には、色とりどりのリボンやラッピングが施された包み。おそらくプレゼントであろう。
今度は視線のみを音の源へと上げると、そこにはこの高校の一年であるアレン・ウォーカーが紙袋を逆さにして立っていた。
ドアを開く音だけでなく、こんなに近くまでいるにも関わらず全く気配に気付かなかった自分に軽く感動していると、その男子生徒は口を開いた。
「僕、チョコレート嫌いなんですよね。」
普段周りの生徒からは清純、心優しく温和、優等生と評されていたはずだ。
しかし、ニッコリの笑った表情とは裏腹な辛辣な言動からは、そんな彼の印象が全くあてはまらない。
先ほどの彼の言動から、この色とりどりのプレゼントがチョコレートであることが推測される。
「なのでこれ、差し上げます。」
「いいの?折角女の子達が少年の為に心を込めて渡したチョコを俺が貰っちゃって。」
いつもの紳士ぶりはどこへやら、と言いたげなティキにアレンはうっとおしそうに溜め息をついた。
「苦手な物は苦手なんです。仕方ないでしょう。それなら棄てるより美味しく戴いた方がまだマシです。」
「そんなモンかなぁー。」
「そんなものです。」
もう用は済んだのか、アレンは大量のチョコレートが入ってあっただろう紙袋を適当な大きさに畳んで鞄に入れて帰り支度を始めた。
「では、さようなら「ちょい待ち。」…なんですか?」
支度を済ませたアレンが振り向きざまに挨拶をしたと同時にティキがアレンを呼び止めた。
ティキのその行動にアレンは怪訝な顔をする。
「少年のちょーだい。」
「は?」
掌を上にして正に“頂戴”のポーズをしているティキはニンマリと笑った。
「チョコだよ、チョーコ!
わざわざ俺が少年用チョコ処理機になるんだからそれくらいの見返りいいだろ?」
「チョコならそこにいっぱいあるじゃないですか。」
「ダーメダメ。少年から直接貰わないと♪」
ティキの言葉に、どうしようもない大人だと言いたげに溜め息を吐くと、アレンは大量のチョコから一つを選ぶと徐に包みを開いた。
食うのか?と、ティキが思案するとアレンはチョコを一粒前歯で軽く噛んでみせた。
その目はいやに挑戦的で、
心なしか口角も上がっている気がして・・・
ぐいっとアレンの頭を引き寄せてティキは顔を近づいて唇を合わせた。
溶け出したチョコと漏れ聞こえる声の甘さを充分に味わうと、ゆっくりと唇を離した。
「では。」
「は?」
甘い雰囲気を味わおうと少年の髪に指を絡ませる前に素早い動きでアレンはティキの腕の中から抜け出し、「失礼します。」と言って保健室を去ってしまった。
その時間、僅か5秒。
呆気にとられてると、今度は別の見知った男子生徒がやって来た。
「やっほー!なあ、ティキはいくつチョコ貰ったんさ!?」
保健室に入って来たのは3年生のラビ。どうやら貰ったチョコの数を競っているらしい。
「ユウは全部断ってるけど推定23個でジャスデビが12個!
んでもって俺ほ24個でトップなんさ〜。
あ、アレンは確か15個だったさ。」
男女問わず好かれる少年にしては意外と少ないなと感じたが、よく少年にくっついてる妹が思い浮かんで妙に納得した。
そう思って手元のチョコを見ると、
「ん?」
開封したものを含めて合計16個ある。
つまり一個多い。
どういうことかと考えて、自分に都合のいい考えが思い浮かび、思わずフッ、と笑ってしまった。
「素直じゃねぇなぁ。」
そうティキが笑って呟いている時、当のアレンは競歩並みの速さで校門を抜けるところだった。
目撃者によると、その顔は真っ赤だったらしい。
end.
'11.9.29.