彼の者の名は、忘却の糸使い
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「眠い……」
「疲れた…」
砂の大地の中、その言葉通りテンションが低く不機嫌な声と、溜め息混じりの声が漏れた。
屍でも歩き出したかのような重い足取りは、悲しいかな、年端もゆかぬ少年と少女のもの。
「眠い……もう、駄目…」
赤茶色の髪に大きな瞳。パーカーとスカート姿の少女は、その場に座り込んだ。
「ちょっ……ちょっとリゼット?こんなところで寝ないでください!もう少しで着きますって!」
少女の名は、リゼット。本名をリゼレイトという。
「ライゼ……」
リゼットは、潤んだ瞳を──最も、眠くて欠伸をした為だが──怪しいくらい黒ずくめの少年に向けた。
「ほら、起きて下さい」
そう言いながら腕を掴んで立たせようとする少年の名は、ライゼルーク。
美しい金髪に、いつも真っ黒なコートに身を包んでいる。
丈は足元まであり、大きいサイズなのか手も全く見えない。
顔以外の肌は全てこのコートに隠されている。
「ライゼ……私…」
リゼットは上目遣いにライゼルークを見上げる。
「何ですか。色仕掛けならあと7年立ってからにして下さい」
冷静に、痛い言葉で返されてしまった。
そう、少女はまだ色気のない13歳。