お江戸の情報屋
□第3話
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「やぁやぁよく来てくれた!君が情報屋か!」
副長と隊長に引っ張られて連れてこられた真選組の屯所。
初めて入る。
探検したい。
そんなことを考えてキョロキョロソワソワしていると土方さんに頭を叩かれ、私の気持ちは目の前に座る人物に戻る。
「は、初めまして·····鳩山まめこと申します」
「俺は真選組局長、近藤勲だ。よろしく頼む!」
ニカッと笑う局長さん。なんとも親しみやすいゴリラ·····じゃなくて、お人だ。
「早速なのだが依頼の話だ。君には、上様の行進ルートを考えてもらいたい。」
「上様の·····行進ルート·····?」
「毎年、将軍が街ん中を行進すんだろ。町人に触れ合いたいとかいう迷惑な名目でよ」
頭にハテナを浮かべていると、近藤さんの隣に腰を下ろしながら土方さんがすかさず詳細を教えてくれる。
「アンタ、この町のことにも詳しいだろ。持ってる情報使って最適な道順を決めてくれっつー依頼だ」
「で、でも、あの行進ルートって5パターンくらいありますよね·····?それをランダムに設定しているのでは·····」
「バレちまったんでさァ。今年どの道を通るのか。」
「へ?」
何故か私の横に座った沖田さんの顔を見るととても眠そうな顔。
興味、ないんすね·····
「いつもはテロ対策で前日の夜、警備体制を整えてから公表してたんだがなぁ。今回は何故かこんなに早くから知られてしまったんだ」
「そうなんですか·····」
「バレちゃいけねぇヤツらに情報が流れちまって、大変なんですぜィ。寝る暇もありゃしねェ」
「総悟、お前昼間何してた?寝てたよね?俺に怒られてたよね?」
「あれは寝てたんじゃなくて夢の中で土方さんを斬りまくってたんでさァ」
「なんつー夢見てんだ!つーか夢見てるってことは寝てんじゃねーか!」
「お客人の前でやめんかお前ら。いやーすまんすまん。
どうだろうか、まめこさん?」
「そ、それなら·····他のルートに変えてみては?」
「それが出来りゃあ苦労はしねーよ」
土方さんが大きく溜息をこぼす。
近藤さんが苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「なんだかこだわりがあるみたいでなぁ。どうしても今年はこのルートがいいらしいんだ」
「俺達の説得にも聞く耳を持たねえ」
「他のルートに変えるくらいなら、新しいルート考えてこいたァ…何様なんすかねェ」
「上様だよ。それに松平のとっつぁんもな」
「あぁ·····確かに今年はそのルートが良さそうですよね。川沿いの桜が一番綺麗に見えますから」
「「・・・・・」」
私の発言で静まり返る室内。
何か、まずいことを言ったか。
「·····何で今年の道順を知ってんだ?」
「え?」
「お、俺は喋ってないぞ!お妙さんにだって内緒にしてるくらいだ!」
「興味ねェんで話してやせんぜ」
「俺だって喋るかよ。他の隊士にも固く口止めしてあんだ。なのに、なんでアンタが知ってんだ」
「それは··········毎年の傾向と対策で」
「試験問題じゃねーんだぞ!」
「いえ本当です!過去のルート選択傾向とか天気とかその年の桜の開花具合、新しく建設された建物、その他色々なことを併せて考えれば見えてきますよ!今まで外したことないですから!」
「·····さすが情報屋だなー!なぁトシ!」
「·····チッ。そういうことなら仕方ねーか」
あぶない。
また逮捕とか言われるかと思った。