色々な世界

□魔王様の誕生日
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山田は仕方なく鏡夜の隣に座り、
出されたコーヒーをいただく。


「あったかい…。」

「外は寒かったか?」

「まぁこの時期ですから。でも平気でした。」


ちょっと強がってみたが本当はものすごく寒かった。
なんせ家から自転車で来たのだから。


コーヒーを机に置くと、

不意に山田の頬に何かが触れた。


「冷え切ってるな。」


鏡夜の手だと認識するのに時間はかからず、
急激に頬の温度が上がっていく。


「ちょっ…!!」


慌てて身を引き鏡夜から離れると
彼は目を丸くし、その後くつくつと笑い始めた。


「まさか山田からそんな反応が見られるとはな。」


蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが、そんなことをすると彼女の人生が終わるのでぐっと我慢する。


「失礼します!!」


ソファから立ち上がり帰ろうとする。
だが鏡夜の手がそれを阻止した。


「泊まっていけと言っただろう。」


掴まれた右手とその言葉で、高まっていた体温が余計熱くなるのがわかる。


「だ、大丈夫です。帰れます!」

「俺の、言うことが聞けないのか?」


山田を見上げる目は真剣だ。

そう言われては断れない。
だが、今回は逆らわなければ大変だ。

言うとおりにして未知の一晩を過ごすか、
逆らって日本にいられなくなるか。
どちらも避けたいところである。


「ところで山田。」

「は、はい?」


頭をフル回転させている最中、急に呼ばれて鏡夜のほうを向くと

何度目だろう、笑顔の鏡夜が山田を見ていた。


「誕生日プレゼントをもらっていないんだが?」

「あっ…。」


慌てて家を出たため山田は忘れていた。
プレゼントの存在を。
恐らくテーブルの上でお留守番中だ。


「まさか、忘れてきた…なんて言わないよな?」

「そそ、そんなことは…ありません…よ?」


持ってきてないと言ったらたぶん本当に帰れなくなる。
あからさまな嘘でなんとか乗り切ろうとしたが、相手は鳳鏡夜。そんな簡単に許してくれるはずなど…


「そうか。」

「えっ??」


意外とすんなりとした反応に拍子抜けしてしまう。
だが何故だろう。俯いている鏡夜を見ると、悪寒が止まらなかった。


「座れ。」

「いやでも…」

「いいから、座れ。」


低い声で命令され、身体が反射的に従ってしまう。
身体に悪い習慣がついてしまったようだ。


「あ、あの…鏡夜様?」


隣に座り、恐る恐る鏡夜の顔を覗き込む。
そして山田は驚いた。

彼は笑いを押し殺しているのだ。


「えっ…鏡夜さ、ま?」

「山田がそんなに積極的だとは思わなかったよ。」


訳も分からず首をひねっていると、鏡夜がこちらに顔を上げた。
その顔は今までで一番の笑顔を浮かべている。


「まさか自分自身をプレゼントにするとはね。」

「…はい?」


鏡夜の言葉の意味を理解しようとするが、徐々に近づく距離が山田にそれを許さなかった。


「そういうことだろう?」

「ちょ、ちょっと待っ…」

「プレゼントらしきものが無いにも関わらず、お前は持ってきたと言ったんだ。」

「ああああの、それはですね…?;」

「俺に嘘なんかつかないよな、山田?」

「うっ…。っていうか近いです鏡夜様!!」


恥ずかしさのあまり俯く山田の顔を鏡夜の手が持ち上げる。


「っ…!!」

「嘘じゃないよな?」


鏡夜にまっすぐ見つめられていると、逃げなければいけないとわかっていても身体が動かなかい。

山田の身体はすっかり鏡夜の命令に逆らえなくなっている。
その証拠に、彼女の口は意思と反して勝手に動いていた。


「嘘じゃ…ないです。」


その返答に満足したように目を細め、
山田にそっと口づけた。


「少し躾をやり直さねばならないが…」


唇が離れたと思うと、
今度はそっと抱きしめられる。


「最高のプレゼントだよ。」






fin


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鏡夜の誕生日でテンションあがって
そのテンションのまま書き連ねてしまいました。
てかこの鏡夜、終始上機嫌で怖いww

鏡夜お誕生日おめでとう!!


管理人 菜美
2011.11.22
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