色々な世界
□いつもの場所
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「生きづらい世の中になったねぇ・・・」
"いつもの場所"に立ち寄った私は呟いた。
そこに見える光景が"いつもの場所"とは変わってしまっていた。
私の相棒、灰皿がいないのだ。
「ここにまで魔の手が及んでしまったのか」
灰皿があったはずの場所には違和感を覚える空間があるのみ。
禁煙が叫ばれる今のご時世。
町からは喫煙所や灰皿が撤去され続けている。
そして、私が通っていたこの場所も
ついに撤去の対象となってしまったようだ。
「あぁ…新しい場所を開拓しなければ…」
肩を落とし、溜息をこぼしていると、
私の後ろで一つの足音が止まった。
「な、無くなってやがる…」
おぉ、私と同じ悲しみに暮れる同志がいるじゃないか。
この悲しみを一緒に分かち合おうじゃないか。
「ひどいですよね!喫煙者に対するこ、のし…う、ち……」
振り返った先を見て私は目を丸くした。
そこに見える黒い隊服。
腰の刀。
無造作な黒髪。
切れ長の目
…は今はこちらの姿を確認したためか大きく見開かれているが、私の知っている姿と同じである。
「ど、どうも…」
「……おう」
真選組 副長 土方十四郎である。