色々な世界
□迷子の迷子の…
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「ギャハハハハッ!こいつ自ら遭難しにいってる!!」
「遭難じゃねーから。」
「安心しろ、葬式には行ってやるから!早く遺体が見つかるといいな!ギャハハ…」ぶちっ
…たく、うるせぇな。
もう少し待ってろての。
誰が遭難だよ。
しょうがねぇじゃねぇか。
道路がねぇんだから。
しばらく道なき道を歩いていくと
突然、横の茂みから
人影が飛び出してきた。
俺はこういう時、運の良いこと…かどうかはわかんねぇが、水谷サンによく出会う。
だからつい、期待をしてしまった。
…期待っつーのは、人が現れたことに対してであって、別に水谷サンだろうが誰であろうが関係はねぇから。
「…あ、ヤマケンくん。」
しかしその人影の正体は
水谷サンではなく、
同じ学校の、確か…山田とかいうやつだった。
女だったらほぼ俺の思いのままになるが
こいつは俺の思った通りにならない。
…あんまり得意ではないタイプ。
「…なにしてんの。」
「それはこっちのセリフ。」
服についた葉っぱを払いながら
そいつは俺に近づいてきた。
「でも良いところにきたね、ヤマケンくん。」
馴れ馴れしく肩に手を置いてきてんじゃねぇよ。
「あ゛?俺は忙しいんだよ。お前の探検ごっこに付き合ってられっか。」
「まぁまぁそう言わずに。」
俺の威嚇をぽんぽん肩を叩きながら
さらりとかわす。
…だからこいつは苦手なんだよ。
何考えてるかわかんねぇし。
「探検してたら道に迷っちゃって。ねぇ、帰り道教えて。」
「知るか。自分で探せ。」
「…あぁ。ヤマケンくんは遭難ごっこ中だったのか。」
「誰が遭難した、誰が。」
なるほど、と一人納得顔の山田を残して俺は再び歩き始める。
「ちょっと、どこ行くの?」
「決まってんだろ、帰るんだよ。」
「そっちには行かないほうがいいよ。」
「うるせぇ。お前の指図は受けねぇ。」
あ〜、こいつと絡んでたら
ストレスが溜まる。
そう考えていると俺の足は
自然と速まった。
「Σぉわっ!?」
なんだよ!道ねぇじゃん!!
目の前に広がったのは世間一般でいう
崖というものだ。
「そっち崖だよ。」
「さっさと言えよ!」
何だ、こいつ!
危うく落ちるところだったじゃねぇか…!!
「ぉわだって!ヤマケンくんがぉわだって!!」
後ろでお腹を抱えながらげらげら笑っている山田を、俺は力の限り蹴飛ばした。